【スポーツ】サッカー日本代表オシム元監督が教えてくれた“考えること”の重要性 監督と大久保嘉人さんへの感謝

 先日、サッカー日本代表のイビチャ・オシム元監督がこの世を去った。入社2年目の07年。私がサッカー担当になった時の代表監督で、関西の記者だったが、何度か取材機会に恵まれたことがある。頭が良く、発想もユニーク。その言葉には意味と力があり、“オシム語録”と言われた名言の数々には、一つ一つに学びがあった。

 私は当時、ヴィッセル神戸の担当で、昨年末で現役を引退した大久保嘉人選手の番記者。彼はしばらく代表から遠ざかっていたが、その頃、日本人トップの得点を挙げ、代表復帰が近いと感じさせる活躍ぶりだった。あるJリーグの試合後、視察に訪れていたオシム監督を直撃。他社の記者と大久保選手の質問を繰り返したところ、「どうしてオオクボのことばかり聞くのですか?」と“逆取材”を受けたことがあった。

 意外な反応に、頭は真っ白になった。「彼は今、点も取っていますし、複数のポジションもこなせます。代表復帰の可能性は十分あるのではないかと思いまして」。しどろもどろになりながら、そんな回答をしたような記憶が…。「それはあなた方の考えですね。ただ、考えるというのはとてもいいことです」。通訳の方を通じ、指揮官がそう話をしてくれたのは覚えている。

 オシム監督と言えば、“考えて走るサッカー”をイメージする人は多いと思う。正直、取材直後の私は核心をけむに巻かれた感覚の方が強かったが、のちに、記者にも考えることの重要性を教えてくれていたのでは?と思い直す機会があった。

 07年8月、大久保選手は約1年10カ月ぶりに日本代表に復帰を果たした。彼が初めて参加したオシムジャパンの合宿も取材。何色ものカラフルなビブスを使った独特な練習は、見た目にもかなり複雑そうだった。本人に話を聞くと、「頭がこんがらがりそうやったね。体より頭が疲れる感じ。けど、楽しかった」と、教えてくれた。

 何気ない言葉だったが、考えることの本質を物語っていると感じた。勉強やスポーツ、仕事もそうだが、真剣に考えて取り組むと、かなりのエネルギーを使う。ただ、疲れるほどに懸命に考えれば、今まで分からなかった発見があり、物事の理解も進んで自然と楽しくなっていく。目から鱗(うろこ)が落ちる思いで監督の言葉を思い出していた。

 私自身、この件をきっかけに仕事への向き合い方が変わり、楽しさや奥深さを知る機会が増えた。今もこうして刺激的な日々を過ごしつつ働けているのは、オシム監督の言葉と、その真意に気付かせてくれた大久保選手がいたからだと改めて感じる。感謝の気持ちを胸に、仕事の新たな魅力が見つけられるよう、今後も貪欲に考え、努力を重ねていきたい。(デイリースポーツ・大西修平)

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