【野球】退団濃厚のサンズが阪神に残した財産 チームを思い、若手に積極助言

 優勝争いの真っただ中だった10月22日。サンズは宮崎にいた。試合前練習中に平田2軍監督が、通訳を呼び寄せて「タクシーを…」。最後までは聞こえなかった。しかし、試合終わりにタクシーで空港に向かい、1軍に合流するのではないか-。そんな記者の予想は、完全に外れた。

 試合後の2軍指揮官への取材で、1軍昇格かと問うと「違うやん」と苦笑いされた。タクシーの会話の答えは「先に宿舎へ帰るだけ」。ただ、この裏にはサンズの人柄があふれていたのだ。

 「この前、試合後の練習を5時頃までやってたらさ、一人で座って、本を読んで待ってたからね。さすがに、帰してやってくれって言ったんだ。その時もボール集めもしてくれて、いいやつやねん。ナイスガイやねん。一生懸命やるし、若い選手にもアドバイスしてくれる。だから、ずっと待ってるのを見てね、タクシー呼んでやってくれって言ったんだよ」

 すでにシーズンは最終盤。CSが控えてはいたが、他球団を見れば、帰国する選手も珍しくはなかった。それでも「チームメートにいい人が多いから、そういう面でもちゃんとしたいと思っているよ。練習でもちゃんとするのが当たり前だと思う。給料をいただいてる以上は、しっかり何でも取り組んでいきたいなって気持ちはあるよ」とS砲。手を抜くどころか、ナインの手本となっていた。

 アップのダッシュは全力疾走。反復横跳びでは、リズムに乗って、全身を動かし、ナインを笑顔にした。打撃練習で気づいたことがあれば、惜しみなく助言。江越、小幡、遠藤…。多くの選手が助っ人の言葉に耳を傾けた。

 助言を送る理由も、チームを思ってのことだ。「知識の共有ができたらいいなと思ってるよ。日本とアメリカの野球でも、同じことを教えていても実際は違うように受け取ったり、考えてしまうことがあった。私がちょっとアドバイスをして、それと色んなものが重なって、発見をしてもらえたり、いいきっかけになったらと思いながら、選手のことを見ているよ」。決して、自分の意見を押しつけない。通訳を介し、何度も意見交換を行っていた。

 その一人が江越。共に1軍へ帯同していた時は、サンズが江越の打撃練習を見守ることが恒例だった。「僕がサンズの打撃を見て、勉強しようと思っていた」という江越。それに気づいた助っ人が「何か聞きたいことある?」と歩み寄って来たという。

 「やっぱり、マルテとかサンズを見てても、もちろん結果を出している。見てても何か学べることはないかなという感じで、打撃を見てた。下半身を使うこと、スイングの軌道も、教えてもらった。実際、感覚も良かったんで」

 江越がこのように話したのは、7月末。そこから、宮崎でも助言を受け、確実に江越の財産になっているはずだ。サンズが阪神を退団することは濃厚となった。それでも、在籍2年間でサンズは多くのものを虎にもたらしたはずだ。(デイリースポーツ・今西大翔)

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