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【野球】伝説の10・8をほうふつさせるセ・リーグのマッチレース あのときミスターは

 マッチレースの様相を呈してきたヤクルト、阪神のセ・リーグ覇権争いに伝説の10・8決戦を取材した記憶がよみがえってきた。あの日の中日-巨人戦(ナゴヤ)は今でも忘れない。

 今季も残り20試合を切り巨人が優勝争いから脱落したが、ヤクルト、阪神は連日、一歩も引かない戦いを繰り広げている。このまま試合を消化していけば、当時、ミスターこと巨人の長嶋茂雄監督(現終身名誉監督)が「国民的行事」といった、1994年10月8日をほうふつさせる、お互いの最終戦まで優勝が決まらない可能性は十分だ。

 この10・8は、日本プロ野球史上初めて、リーグ戦の最終戦前の勝率が同率で並んでいるチームが直接対決し、勝った方が優勝を決める試合がナゴヤ球場で行われた日である。

 このとき、私は巨人担当キャップで四六時中ミスターに張り付いていた。「国民的行事」発言も、じかにこの耳で聞いた。その発言の直後、ミスターは確かに「エッヘッヘ」と笑った。当時、監督付の小俣進広報に、ミスターの笑いの真意を尋ねた。「監督は本当にワクワクしているんだと思う。最終戦で勝って優勝するイメージがあるはず」という答えが戻ってきたことを覚えている。

 この年のペナントレースは、各チーム26回戦総当たりの130試合制だった。巨人はシーズン序盤から順調に勝ち星を重ね、中日に勝った8月18日にはマジックナンバー25を点灯させた。この時点で優勝を確信した私たちは、優勝時の手記をだれに頼むかなど準備を始めていた。

 ところが、巨人が8月25日から9月3日にかけて9連敗するなど失速。その後、何度かマジックが再点灯しては消えるという状況が続き、129試合を終了した時点では69勝60敗で並んだのである。

 実は試合中にミスターを巡って、とんでもない情報が長嶋番記者の間を駆け巡っていた。もし、巨人が試合に負けて優勝を逃した場合、「ミスターは試合後の会見をせずに東京に戻る。そしてしばらくは人前にでてこない」というものだった。

 試合はナイターで終了後には、名古屋-東京間の新幹線は走っていない。交通機関はないはずだが、いつも東京ドームに送り迎えする運転手の方が、ミスターを東京の自宅まで送り届けるため、東名高速道路を走り名古屋に向かっている-という話だった。

 優勝を逃せば電撃辞任もあるかもしれない状況。この情報に、私たちも試合後、即座に東京へ戻るため、レンタカーの手配やタクシーの予約を検討したほどだった。

 結果は巨人が勝って優勝。ほとんどの巨人担当が緊張感から解放され、試合後の飲食店で少々羽目を外し「お前たちが優勝したわけじゃない」としかられた人間もいた。そんなヒリヒリした状況が今年は再現されそうな気がしてならない。(デイリースポーツ・今野良彦)

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