【野球】カープ記念Tシャツの秘密 原点はブラウン監督の“ベース投げ事件”

判定に激怒して一塁ベースを放り投げるブラウン監督。これが記念Tシャツ製作の原点となった(06年5月7日の中日戦)
練習中、「監督代行」のTシャツを着たリブジー打撃コーチ(左)と「I THROW BASES(ベースを投げるよ)」のTシャツを着るブラウン監督(06年5月)
自ら特製Tシャツを着てファンの声援に応える広島・黒田博樹(16年7月)
3枚

 広島カープは今年も数々の記念Tシャツを発売している。2010年に初めて製作し、今年11年目を迎えた。製作テーマは「記念」「サヨナラ勝利」「感動的・印象的な出来事」の3つ。記憶に残るシーンを形として残すことで、ファンに胸に刻み続けてほしいという思いがある。

 10月3日のヤクルト戦(神宮)でプロ初本塁打を放った大盛の記念Tシャツは2日後の5日から注文を受け付けた。念頭にあるのはスピード感だ。余韻が冷めないうちにTシャツにすることで記念の一打を長く記憶にとどめてほしいという思いが強い。

 松田一宏オーナー代行は「ファンの方とのコミュニケーションの一環として製作を始めた。思いを共有することを大切にしている」と説明する。

 初めて発売したのはマツダスタジアム開場翌年の10年。4月13日のヤクルト戦で延長十回、石原がサヨナラ本塁打を放ち、翌朝、急きょイラストを描き製作に着手した。初めての試みだけに枚数の見当がつかない。当時は限定100枚を作り、すぐさま完売した。

 記念Tシャツのアイデアが生まれたのは、その4年前にさかのぼる。広島市民球場時代の06年5月7日の中日戦で起こった「ベース投げ事件」だ。就任1年目のブラウン監督が、先発のロマノが球審に暴言を吐き退場となったことに対して猛抗議。一塁ベースを引っこ抜き投げつけた。ブラウン監督は侮辱行為で退場処分を受けた。

 前代未聞の出来事は大きな話題になった。後日、球団はTシャツを作製。首脳陣や選手が試合前の練習で着用したところ、ファンから大きな反響があった。これが記念Tシャツ製作の原点となった。

 一般発売は今年で11年目を迎えた。8月28日の阪神戦(マツダ)では上本が涙のサヨナラ打。「サヨナラTシャツ」は通算67枚目となった。製作テーマは「記念」「サヨナラ勝利」「感動や面白い場面」の三つ。15年、黒田がカープに復帰することが決まった時は、会見で発した言葉から「一球の重みTシャツ」を作った。

 また、同年にはインフィールドフライの捕球ミスでサヨナラ勝利するという珍事もTシャツにした。「どんなデザインにしたら良いか難しかった」。熟考を重ね、前面にはアピールした石井コーチと緒方監督の写真をプリント。「知ってたもん勝ち」の文字と共にインフィールドフライについての公認野球規則を記した。

 製作にはスピードが求められる。「いかに早く届けられるかが大事。地元で作ることができれば」と、球団は広島市内に製作工場を建設。デザインも含め外部に発注はせず、自ら製作することで、記憶が鮮明なうちにファンの手元に届けられるようにしている。

 価格は1枚3000円。Tシャツ発売が決まると、球団ホームページ、またはマツダスタジアム内のグッズショップなどで注文を受け付け、後日発送する。「一つ作ったら次はどんなものにするかを常に考えています」と松田オーナー代行。これからもファンの記憶に残るようなTシャツを作り続けていく。(デイリースポーツ・市尻達拡)

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