【野球】巨人・ドラ5山瀬の現在地「野球で稼いでいかなきゃ…」甲子園激闘の夏から1年
梅雨明け早々、うだるような暑さとなった2日のジャイアンツ球場に菅野智之投手(30)と高卒ルーキー・山瀬慎之助捕手(19)の姿があった。
2日後に迫っていた甲子園での先発登板に向けてブルペン入りしたエース。そのボールを受けたのは昨夏の甲子園のスター、ヤクルト・奥川とバッテリーを組んだ山瀬だった。
ブルペンで42球を投げた菅野の投球を受けた若武者は杉内、木佐貫両2軍投手コーチを初め、戸郷ら投手陣も見つめる中、緊張からかうまく捕球音を奏でることができず「パスッ」というふ抜けた音が三塁側ブルペンに響く。「ナイスボールです!すみません!」。菅野も「OK!」と高卒ルーキーの懸命な姿に温かいまなざしを向けていた。
鍛錬の日々を送る山瀬。キャッチングも悪戦苦闘の日々だが、スローイングの安定性も課題に置いている。ある日の全体練習終了後の個別練習では実松2軍バッテリーコーチとマンツーマンでスローイング練習を行った。「今までは地肩だけで投げてたんですけど、これからはそうはいきません。長くやるってことも考えて下を使って投げるってことを教わりました」と一球一球、下半身に意識を置いて、1時間近く、ネットにボールを投げ続けた。
その甲斐もあってか、12日の日本ハム戦では平沼の二盗をストライク送球で仕留め、失策も0を継続中。同戦では左翼へ“プロ初弾”も放ち、村田2軍打撃コーチも「投げることや振ることに対して体に馬力があるので今後が楽しみな選手」と素材に太鼓判を押す。
一般的に捕手は芽が出るまで時間が掛かると言われるポジション。球団で1軍公式戦に通算100試合以上出場した高卒生え抜き捕手は、1999年入団の加藤健現3軍バッテリーコーチにまでさかのぼらなければならない狭き門でもある。
それでも山瀬は「プロに入ると、この先の人生を野球で稼いでいかなきゃいけないので」と覚悟を固め、懸命に白球を取る、投げる、打つ。筆者も社会人1年目。コロナを理由にいろんなことが言い訳できる時代に、同じ“ルーキー”の力強い言葉が胸に刺さり、勝手に親近感を持って“見ている”日々だ。いつかこの“見ている”が“接する”に変われば良いなぁ…。そんなことを考えるコロナ禍の“特別な夏”なのである。
昨年、甲子園準優勝という“特別な夏”を味わった男が送る、努力の日々。星稜-履正社という、昨年夏の甲子園決勝カードが甲子園交流試合で再現された15日も、山瀬はジャイアンツ球場で汗にまみれていた。(デイリースポーツ・畠山賢大)





