【野球】井端弘和、ベーブ・ルースの再現弾「見ててよ、絶対に打つからさ」

 メジャーで12度の本塁打王に輝き、通算714本塁打を放ったベーブ・ルースには、病床の子どもに本塁打を約束して実際に打ったという伝説がある。日本版ベーブ・ルース。2006年7月4日の巨人-中日戦(東京ドーム)で伝説は生まれた。

 名手で鳴らす中日・井端弘和の元に試合前、友人から連絡が入った。「40を超えて言うのも少し恥ずかしいんだけどさ。俺、今度結婚することになったんだ」。生涯の伴侶を射止めたという電話に即応した。

 「本当に?おめでとう。今日の試合見ててよ。俺、絶対に打つからさ」

 約束は破るためではなく、守るためにある。初回1死一塁から、亜大の後輩に当たる巨人・木佐貫から左前打。続くウッズが遊ゴロ併殺打に倒れたことで得点には結びつかなかったが、祝福の一打を敵地に刻んだ。

 これで伝説と呼ぶほど安い男ではない。第2打席の四球を挟み、1点リードで迎えた五回2死一塁。今度は2番手・野間口を仕留めた。中堅への3号2ラン。プロ9年目にして初めて東京ドームで放った一発。プロ通算56本塁打。この一本には特別で、鮮やかな彩りを添えた。

 「今日は気合が入ってましたからね。打てて良かったです。ホームランはちょっとできすぎかもしれないですけど」。口約束だけのビッグマウスに終わらず、長距離砲でもないのに本塁打で記念日を祝った勝負強さ。見上げた根性というほかない。

 13年オフに巨人に移籍。14年は87試合、翌15年も98試合に出場するなどしたが、原辰徳監督の退任に伴って、同級生の高橋由伸が来季の監督に就任することが決まった。井端は現役続行の意思を固めていたが、高橋からの「コーチとして俺を助けてくれないか」という電話に現役引退を即断した。

 「僕ら世代のスーパースターである由伸からのお願いですよ。断れるわけないじゃないですか。由伸だってまだまだ現役でやれたはずなのに、僕だけまだ現役でいるわ、なんて言えないです」

 通算2000安打に残り88本。当時40歳。来季もまだ十分に戦力になれる力を有していたが、多くの時間をかけずに未練を断ち切った。3年間のコーチ生活を経て、高橋監督が退任すると、歩調を合わせて退団を願い出た。男気あふれる人生の歩みだ。(デイリースポーツ・鈴木健一)

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