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【スポーツ】現役東大生がアメフト日本代表 緻密な性格が幸いした文武両道のOL唐松

 アメリカンフットボール日本代表に選ばれた現役東大生の唐松星悦選手(中央)
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 アメリカンフットボール日本代表は3月1日、アメリカ育成プロリーグ「The Spring League」選抜とアメリカのテキサス州で対戦する。5年ぶりに結成されるアメフト日本代表は、2月上旬のトライアウト、練習を経て45人の最終メンバーが決定した。大半はXリーグで活躍する選手で構成されるが、この中に現役大学生も2人含まれる。そのうちの一人が、東京大学文学部3年生のOL唐松星悦だ。

 「小学生の頃は水泳教室に行くくらいで運動をしたことがなく運動音痴でした。運動神経がなくて体形がぽっちゃりでも始められるスポーツといったらアメフトかなと思いました」とアメフトを始めたきっかけを話してくれた唐松選手。現在は身長185センチ、体重125キロと抜群のサイズを持つが、中学校時代は身長163センチと、普通の体格をした中学生だった。

 しかし、高校生で一気に身長が伸びて180センチまで成長した。理由は、「ご飯をたくさん食べて、よく寝ていました」。そして大学入学後に体重を50キロ増やした。体重増加は、元日本代表ヘッドコーチ(HC)で現東大HCの森清之さんの「何が何でもフィジカルで勝つ」という教えのもと、2年前から東大アメフト部に根付いた文化だという。

 中高一貫教育の浅野中学校・高等学校に入学した唐松選手は、中学でアメフト部に入部してからずっとオフェンスラインを務めている。理由は単純明快。「タッチフットをやっていた中学からずっとオフェンスラインでした。浅野ボンバーズは、バックスをできる選手はバックスをやらせて、バックスをできない選手はラインをやらせる方針でした」。中学では防具をつけないタッチフット、高校から防具をつけてアメフトをプレーした。高校時代は部員数が少ないためオフェンスとディフェンスの両方で出場。オフェンスではセンターを任されていた。

 大学から日本代表でもプレーするレフトタックル(LT)にコンバートされたが、これは東大のチーム事情のためだった。アメフトでオフェンスラインと言えば、クオーターバック(QB)やワイドレシーバー(WR)、ランニングバック(RB)などと比べて陽の目をみるポジションではないが、QBを守ったりRBの走路を開けるための重要なポジション。アメリカンフットボールの最高峰NFLでは、ドラフト上位で指名されるほど大事なポジションだ。

 特に、唐松選手が任されているLTは“ブラインドサイド”と呼ばれ、右利きQBの背後に迫るディフェンスからQBを守る最重要のポジションだ。それだけに、「もちろん誇りに思っています」と唐松は胸を張る。さらに、「オフェンスラインが自分に合っていると思ったのは、細かいところまでこだわるところです。受験勉強に例えると、勉強も細かいところまで気になるタイプです」。唐松は根っからのオフェンスライン気質なのだ。

 文武両道を掲げる浅野高校から、現役で東大に合格した唐松選手。「ルーティンに入ると力を発揮するタイプなので、夏休みは1日12時間は勉強していました。学校があるときは学校の勉強にプラス3時間くらいでした」。アメフトと勉強を両立させて、見事第1志望の大学に入学した。

 アメフトと勉強。一見相関性がないように思えるが、唐松選手はしっかりと両者を紐づけている。「緻密なところもそうですが、両方とも反省とか復習がすごく大事です。アメフトで練習の反省をして次につなげるのもそうだし、テストで同じミスをしないことも全部つながっていると思います」。

 唐松選手は大学1年時の2018年7月にメキシコで開催された第5回IFAF U-19世界選手権に日本代表として出場。しかし、メキシコとカナダに敗れて5位に終わり世界の差を痛感した。この時の悔しさが、今回の日本代表への挑戦につながった。

 「U-19世界選手権に出場した際に自分の力不足を痛感しました。海外に勝つことももちろんですが、そもそも自分自身にリベンジを果たしたいということがあり、情けない状態で終わりたくありませんでした。しっかり2年間で成長して、その力を試すという意味で挑戦しました」

 そこから2年間、唐松選手は己を鍛えてリベンジの時を待っていた。そして、着実に力をつけた。今年の2月に行われた日本代表の練習では「パスプロテクションのステップは、結構こだわったこともあって2年前から改善して通用したかと思います」と手ごたえをつかみ、米倉輝共同攻撃コーディネーターも唐松選手のプレイを称賛した場面があった。これには「自分の中でも自信がありましたが、(褒められたことで)確信しました」と素直に喜んだ。それでも、「全部一から学び直しです」と気を引き締める。

 現役東大生にしてアメフト日本代表。これからも続くかもしれない唐松選手のアメフト人生の目標は何だろうか。

 「僕のアメフト人生は大学で終わるかなと思います。まあ終わるかどうかは分かりませんが、僕がアメフトに関して見ている目標はただ一つ。東大をいかに日本一にするか。そこだけはこの1年は何が何でもコミットしたいなと思っています」

 あくまでも当面の目標は東大アメフト部を日本一に導くことだと言う。それでは将来的な目標は何なのか。

 「僕はあまりビジョナリーなタイプではないので、正直あまりないですけど、アメフトとかスポーツは何かしら盛り上げたいなと思います。それが人生の主軸になるかどうかはわかりませんが、スポーツで無駄に苦しんでいるチームとかの助けになりたいです。どんなにポテンシャルがないチームでも正しいことをきちんとやれば、限られた資源の中でもうまくいくし心も成長するのに、そこでなぜか言い訳をして下の方にいってしまう。僕が育った浅野高校もそういう節がありますが、そういうスポーツの部活は多いかなと思います。そこらへんには還元できることがあったらいいなと思います」

 自分の経験したことを還元して、社会貢献することも視野に入れている。

 いざTSL選抜との対戦へ。「TSL選抜との戦いで一番大事にしたいことは、恐れないこと。誰よりも強く当たりにいくだけです。そこだけは絶対に負けないようにしたい。自分が成長してチームのために還元したい。自分が成長するための条件として、自分より体が大きくてうまい選手に対していかに食らいつくか、ということを意識したい」。世界との差が2年間でどれほど縮まったかを推し量れる絶好の機会だ。

 アメリカンフットボールの母国アメリカ相手に恐れずに向かって当たり負けしなかったとき、唐松選手の2年間の努力が自信から確信に変わり、東大日本一の野望へも近づいていく。(ライター・一野 洋)

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