【スポーツ】16場所ぶり幕内復帰の豊ノ島が明かした“センスの男”ゆえの葛藤

 大相撲春場所(10日初日、エディオンアリーナ大阪)で16場所ぶりに幕内復帰した元関脇で西前頭14枚目の豊ノ島(時津風)が“センス”の男ゆえの葛藤を明かした。

 35歳にして「相撲を変えた」。その影響が出た一番があった。

 2日目、琴恵光(佐渡ケ嶽)戦。立ち合い、押し込んで一気に出たが、土俵際、突き落としを食らった。右は入ったが相手得意の右四つ。構わず出る形は相手の“ワナ”だった。警戒はしていたが逆転技に倒れた。

 「紙一重ですからね。左上手でも取れれば良かったけど」と前に出た負けに後悔はない。一方で本来は懐に潜り込み、鋭い左差しやもろ差しが取り口。足腰も強く土俵際の粘り腰も武器とする。

 立ち合い、弾いて一気に走る相撲を始めたのは2年に及んだ幕下生活だった。

 16年名古屋場所前に左アキレス腱を断裂し幕下まで落ちた。度重なるけがで毎場所、引退と隣り合わせ。「引退を覚悟して、どうせなら最後くらい前に出る相撲を悔いなくやろう」と開き直ったことがきっかけだった。

 自他共に認める「センス」の持ち主。新たな戦法をあっという間に自身のものにするのはさすが百戦錬磨だ。

 進退危機を乗り越えて昨年九州場所、2年ぶりに十両に復帰した。先場所、西十両5枚目に番付を戻し10勝を挙げて、幕内に返り咲いたのだ。

 小6から相撲を続け「今までにない感覚」で「意外とはまっちゃった」と言う。「悪い意味で迷走。いい意味でチャンレンジ」と、相撲が成長している。

 「押し込めている感覚は楽しい。思ったより俺、圧力あったんだと。自分の分からないところを経験できている」と相撲人生終盤で楽しむ感覚がある。

 反面、幕内舞台はやはり甘くはないことも知る。「相手が小さい力士だと押せる、いけると思ってしまう。前に出る時にまだ対処がちゃんとできない。軽量はそういうのを利用してくる」。自身も身長169センチと幕内では照強と並び最小兵なだけに、分かっているのに逆転を食う。修正の余地があるのがまた楽しい。

 「けがする前と違って今は(場所前の)金曜日とかでもやっと始まるとわくわくしている。そういう考え方になるなんて。一生、相撲を楽しむことはできないと思ったから。負けたらどうしようじゃなくなった。気持ち的にフレッシュ。新入幕の頃のようにフレッシュ。怖がらずに思い切りいくだけ。『レモンスカッシュ』のような感じ。濃厚ミックスジュースのような感じ」。若さが弾け、相撲のうまさが凝縮されていると言ったところか。

 「踏み込んでくるのか、二本差して来るのか、相手は考える。相撲の幅が広がる」。35歳にして“二刀流”。豊ノ島の技が切れる。(荒木 司)

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