【競馬】インティが夢の米ブリーダーズC挑戦へ 待たれる陣営の決断

 誰にでも憧れの地があるだろう。サッカーなら、名門マンチェスター・ユナイテッドの本拠地オールド・トラフォード。約7万6000人のファンと一緒に一度は観戦してみたいものだ。

 競馬の聖地も多い。パリ・ロンシャン競馬場(フランス)を初めて訪れた時は鳥肌が立った。行ったことのない場所なら競馬発祥の地、英国アスコット競馬場。米国ならパソコンの壁紙にしているチャーチルダウンズ競馬場。あとシービスケット像のあるサンタアニタパークも、死ぬまでには訪れたい競馬場のひとつで、今年のブリーダーズカップの開催地だ。

 さて、本題へ。7連勝で2月17日のG1フェブラリーSを制したインティ。『ブリーダーズカップチャレンジ』に該当するレースだったため、ブリーダーズカップへの優先出走権が与えられた。ところで優先出走権には何が含まれるのか。レーティングにかかわらず、出走できる優先出走権。フルゲートを超える頭数が参戦意思を示した場合、優先的に出走できる権利だ。

 出走登録料も免除される。ブリーダーズカップ・クラシックの場合、総賞金1・25%に相当する7500米ドルの予備登録料と、7500ドル(こちらも総賞金の1・25%)の出走登録料。合わせて15000米ドル、日本円で約165万円が免除される。そして、約10万ドルかかるとされる輸送費の総額のうち、補助として4万ドルが提供される。自己負担は6万ドルほどになる。

 ただし、優先出走権に含まれないものがある。現役馬登録だ。ブリーダーズカップ未登録種牡馬の産駒の場合、今年なら7月15日までに登録すれば10万ドル、それ以降の登録だと20万ドルが必要となる。インティの父ケイムホームは未登録種牡馬のため、日本円にして最大2200万円の追加登録料が必要になる。決して安い金額ではない。

 現在のところ、インティの秋のプランは未定。陣営も頭を悩ませることになりそうだ。ブリーダーズカップ(11月2日)挑戦について主戦の武豊Jに聞いてみた。「そりゃ行きたいよ。今年はサンタアニタだから、絶好でしょ。自分も勝手知ったる場所だし、挑戦したい」。自身が2000年に長期滞在したのがアメリカ西海岸。サンタアニタパーク競馬場では騎乗経験があって、勝ち鞍も挙げている。「気候もいいし、環境もいい。コースもインティに合うと思う」と海外挑戦に胸を躍らせる。

 管理する野中賢二調教師はどう感じているのか。「サンタアニタなら、乗り継ぎなしで行けるのがいい。馬の負担が違う」と直行便のメリットを強調。さらに「5歳でいかないと」と、充実期を迎えた今だからこそ価値があると言う。1年ごとに開催場所が変わるブリーダーズカップ。20年はキーンランド競馬場、21年はデルマー競馬場で行われるが、今年だからこそ、チャンスがあるというわけだ。

 アメリカのダート界は強敵ぞろい。簡単ではないが、「挑戦するだけじゃ意味がない」と力を込める。結果を追求するのには理由がある。トレーナーは、開業2年目の10年にトウカイトリックでオーストラリアに遠征。コーフィールドカップ、メルボルンカップに挑戦している。「本馬場とポリトラックで調整したけど、メニューを組むのに苦労した。メルボルンカップは、(現地滞在)2走目でかなり状態が上がっていた。でも、何十年ぶりという大雨が影響して結果を出せなかった。最低でも、遠征費用分の賞金は獲得して帰る計算だったのに…。オーナーに申し訳なかった」と悔しそうに振り返る。

 それから9年の歳月を経て、再び世界を相手に力を試す機会に恵まれた。「あの(豪州遠征)経験があるから、それ以上の準備もできる。自分も海外にはよく行くから、ノウハウの蓄積もある。“こうすれば良かった”という思いを生かしたい」。そんな意気込みを語る一方で、揺れ動く胸中も伝わってくる。「しわ寄せが行くのはオーナー。でも、オーナーに夢も見させてあげたい。最優秀ダート馬を獲りに行くのか、海外遠征か。自分はしっかりと現実を見て判断しないと」。英断が待たれる。

 憧れの地に、インティとともにトレーナーと武豊Jが挑戦するなら夢のよう。ブリーダーズカップ参戦が実現したら、貯金を使い果たしてでも休暇を取り、その瞬間に立ち会いたいと思っている。(デイリースポーツ・井上達也)

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