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【野球】猛虎再建に尽くす職人の決意

 球春到来。うちなんちゅ(沖縄県民を表す言葉)が上手に鳴らす指笛が球場にこだまする。阪神が沖縄・宜野座で迎えた17度目の春季キャンプ。最下位からの逆襲を目指す新生矢野タイガースの戦いが始まった。

 表情には出さずとも、例年以上に熱い思いを抱えてタラップを降りた男がいる。91年度ドラフト2位で阪神に入団。92年に新人王に輝くなど、現役時代は守備の名手として甲子園を沸かせた久慈照嘉内野守備走塁コーチ(49)だ。

 普段からあまり野球の話はしない。決して口数も多い方ではない。キャンプ前、何度か食事を共にした。黙して語らずのタイプだと思っていたが、このオフは会うたびに同じセリフを口にした。

 「なんとかせんとな」

 05年の現役引退後、真弓監督初年度の09年に内野守備走塁コーチに就任。13年に退団したが、15年オフに金本前監督に請われて現場復帰。大山、糸原、植田らの守備力向上に心血を注いだが、17年ぶりの最下位に沈んだ昨年の成績を重く受け止めていた。

 「オレはカネさん(金本前監督)に呼んでもらった人間。監督と片岡(前ヘッド兼打撃コーチ)が辞めて、オレも辞めるのが当然だと思ってた。ただ、矢野さんから『久慈、頼むぞ』と声をかけてもらった。オレだけ残っていいものかと思ったけど、カネさんからも『助けてやれよ』と言われて」。自分だけがユニホームを着続ける心苦しさはあったが、金本前監督と矢野新監督の思いが前を向かせた。

 97年のシーズン最終戦後、中日へのトレード移籍を告げられた。2対2の交換トレード。久慈と関川が中日に移籍し、逆にタテジマに移籍してきたのが矢野と大豊だった。こんなところにも浅からぬ縁を感じる。

 「野球に失敗はつきもの。ただ、失敗という結果に至るまでに、どういう過程を踏んでいたかだよな。攻めた結果なのか、それとも失敗を恐れて安全に行ってミスしたのか、心と体の準備はできていたのか…。去年は守備のミスが多くて、しかも失点に結びつくケースが多かった。今年は少しでもエラーを減らせるように。ピッチャーの負担を増やすんじゃなくて、減らせられるようにね」

 キャンプ初日、ありったけの思いを込めて久慈コーチはノックバットを振った。スポットライトの当たるポジションではない。シーズンに入って内野手がエラーをすれば、必ずといっていいほどベンチ内での姿が映し出されるが、好プレーが出た場合に同じかといえば、そうではないことの方が多い。ただ、選手個々の技術向上がチームの勝利につながる。日々の小さな積み重ねが実りの秋に通じるからこそ、自らの財産を生前贈与する。(デイリースポーツ・鈴木健一)

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