【芸能】異色作「カリギュラ」は配信だから迫れる「人間ドラマ」 芸人100組に断られた企画も

 視聴率が見込めない。コンプライアンス的にNG。くだらな過ぎる。そんな「地上波放送では禁止された企画書」を復活させていく…という超危険番組が存在する。Amazon Prime Videoのバラエティー番組「今田×東野のカリギュラ」だ。昨年から配信が始まり、8月末にシーズン2がスタート。総合演出の姉崎正広氏を直撃すると、100組の芸人にオファーを断られた企画もあるという。バラエティーの最先端とも言える異色作の裏側を聞いた。

  ◇  ◇

 配信中の企画タイトルを見てもらえば、番組の雰囲気が伝わると思う。昨年から配信されているシーズン1には「うちの親は大丈夫!母ちゃん、オレオレ詐欺選手権」「ホームレスインテリ王決定戦」「夜の嬢王は誰だ!?の嫁 指名ダービー」などの危険な臭いのする文字が並ぶ。

 最新のシーズン2にも「家庭内下着泥棒グランプリ」といった、想像をかき立てられる企画がズラリ。姉崎氏に聞けば「下着泥棒-」は、3カ月かけて100組の芸人に声をかけ、実現した5人しかオファーを受けてくれなかったという。

 過激な企画が多いゆえにキャスティングが難航するのはデフォルト。MCの今田耕司も番組中で、後輩芸人からオファーを断ったと報告されたことをネタにしている。

 過激さは配信番組ゆえの“箔(はく)”でもあるが、姉崎氏は「地上波にケンカを売ってる訳じゃないんです」と強調する。地上波のようにスポンサーの意向を気にすることがなく、コンプライアンス的に自由度が高い配信番組…ではあるが、過激な企画ありきで制作している訳ではないという。

 肝は「もともと僕の好きだった人間のリアルの追究。それが一番見せたいコンセプト」。タイトルの「カリギュラ」とは、禁止されるとやりたくなる心理現象を意味するが「地上波に禁止されたどうこうより、好奇心を大事にしている。そこに人間のリアルがある」と説明する。

 地上波では無理そう…と脳内で歯止めをかけてしまいそうな企画を実現させたらどうなるか。まだ手探り状態だったシーズン1では「30~50の企画を出して、実現できたのは5、6本」という。

 その中から東野幸治が野生動物を狩る「狩りシリーズ」や、タレントが自身の夢描くドッキリをセルフ演出する「自作自演やらせドッキリ」などのコンテンツが育った。

 姉崎氏は「地上波で見れないものを作っているんじゃなくて、地上波、配信ひっくるめて“ここ”でしか見れないものを作ろうとしている。地上波と配信で規制もまったく変わってくるので、クリエーティブも変わる。地上波でできないから『俺ら面白いだろ?』ってスタンスではやってないです」と明かす。地上波のバラエティーはレギュレーションの違う、良きライバルといったイメージだろうか。

 元EE JUMPで2008年に懲役5年6か月の実刑判決を受けた後藤祐樹さんは、あくまでも一般人の立場ながら同番組で“芸能復帰”。シーズン1の「訳あって地上波ではなかなか会えない、あの人は今!?」という企画がきっかけで、今では準レギュラーのような扱いとなっている。確かに、地上波では難しい取り上げ方かもしれない。

 オレオレ詐欺を題材した企画も「地上波だと犯罪を助長するからダメだとダメダメ意見が多いのかもしれない。過激ありきでやろうとしているんじゃなくて、とことん迫る。そこをうまくバラエティーにするのが大事」と姉崎氏。「地上波は地上波で面白い番組がいっぱいあるし、僕らは僕らで作れるものがある。テレビの人たちが『あれ面白いね』って言ってくれて、一緒に盛り上がっていけたらいいなと思います」と相乗効果に期待した。

 姉崎氏はフジテレビ系「関ジャニ∞クロニクル」の演出も担当。地上波と配信番組は敵ではなく、互いを高め合う仲間だとの思いが伝わった。

 「カリギュラ」のシーズン2後編となる9~18話は今冬から配信開始。現在、鋭意制作中という。(デイリースポーツ 古宮正崇)

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