【スポーツ】桃田 違法賭博問題から世界一へ 過去の栄光執着せず“過去”超えて真の王者に

 バドミントンの世界選手権(5日、南京)の男子シングルスで桃田賢斗(23)=NTT東日本=は世界ランク3位の石宇奇(中国)に2-0で快勝し、日本男子として五輪、世界選手権を通じて初の金メダルを獲得した。違法賭博問題による出場停止処分でリオ五輪に出られなかったエースが、3年ぶりに出場した大舞台で輝いた。

 「復活というより進化している」。4月のアジア選手権を制した際、桃田はそう言った。元世界ランク2位で15年世界選手権では銅メダル。過去の実績が輝かしいだけに、復帰後は事あるごとに「以前の自身と比べてどこまで戻ってきたか」と聞かれたが、「以前の自分がどうだったか覚えていない」と答えた。桃田には「強かった頃の自分に戻ろう」という意識はなかった。だからこそ“過去”を超えることができた。

 国際大会に復帰した17年7月、桃田はまるで“浦島太郎”だった。自身が不在の間、世界トップが進化するだけでなく、初めて金メダルを獲得したリオ五輪を経て日本代表も格段にレベルアップ。約1年ぶりに代表選手と帯同し、プレーだけでなく私生活での意識の高さにも驚いた。

 例えば遠征中の食事。桃田はレトルトご飯にインスタントのみそ汁だけという日もあったが、スーパーで野菜を買い、鍋をつくって良質な食事を摂取する選手もいた。以前はわが道を行くタイプだった桃田も炊飯器を持参するようになった。最高のパフォーマンスを出すためなら他者のいい部分を貪欲に取り入れた。

 ランニングも苦手だったが、謹慎中は毎日、練習前に約1時間走り込んだ。もう一度大好きなバドミントンをすることを許された喜びと、強くなろうとする覚悟があった。以前にはなかった粘り強いスタミナは、それによって培われた。

 日本代表の常山幹太(トナミ運輸)はこう証言する。「昔より今の方がめちゃくちゃ強い。今はフィジカルも上がって球の質が全然違う」。天才的なショットを武器にしていたエースは光と影を経験し、復活ではなく進化を遂げて真の王者になった。(デイリースポーツ・藤川資野)

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