【野球】瀬戸内4番打者が涙を流さなかったわけ 西日本豪雨で特別な大会も閉幕へ

 高校野球広島大会は28日に広陵、広島新庄との決勝が行われ、優勝校が決まる。今年は西日本豪雨の影響で開幕が遅れた。学校や実家が被災した選手もいる。さまざまな困難を乗り越えた、特別な大会だった。

 今春のセンバツに出場した瀬戸内は4回戦で尾道に敗れ、春夏連続での甲子園出場は夢と消えた。それでも昨秋の中国大会で1試合4発を放ち一躍注目を集めた門叶直己外野手(3年)の目に涙はなかった。

 「秋の中国大会と選抜で負けたとき泣いてしまったので、今大会は負けたとしても絶対に泣かないと決めていた。負けたことはもちろん悔しいですけど、みんなと野球ができて幸せでした」

 福山工との初戦で高校通算27号を放つなど4安打4打点の活躍。3回戦の吉田戦では、左ほおへの死球後、2安打2打点の活躍をみせた。敗れた尾道戦は初回に先制の2点適時打を放った。

 重圧を乗り越えて迎えた今大会だった。センバツ後は極度の不振に陥り、打球が前に飛ばなくなった。5月上旬には4番をはく奪された。2年夏から中軸を任されて以降、初めてだった。「もう一度、はい上がって4番を任せてもらえる選手になろうと思った」。チームメートからも「4番はお前しかおらん」と掛けられた声が大きな励みになった。打席の中で甘い球を確実に仕留める技術を身に付けるため、集中した打撃練習。状態は戻り、信頼を取り戻してグラウンドに立った。

 気は優しくて力持ち-。そんな言葉がピッタリだ。誰とでも気さくに話を、チームメートからいじられるときもある。尾道戦後。号泣する新保利於主将(3年)主将の肩を抱き、声をかけ続けたのが印象的だった。

 卒業後は大学に進学し野球を続ける予定。たくましく成長した姿をまた、見たい。(デイリースポーツ・市尻達拡)

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