【野球】親日派のMLB本塁打王、日本球界移籍はあるか

 「京都は美しかった。今まで見たことのない景色に感動しました」

 エンゼルスのクリス・カーター内野手(31)からそんな話を聞いたのはキャンプが始まって間もない2月20日のことだ。

 アストロズ時代の14年11月にMLBオールスターズの一員として来日。福岡、大阪、東京、札幌、沖縄を転戦する中で『日本』に魅了された。身長193センチ、体重110キロ。見上げるほどの大きな男が、けろけろけろっぴのグッズをお土産に買ったんだと言った時には思わず、笑ってしまった。

 その日、クラブハウスにいるカーターの元へ話を聞きに行ったのには理由があった。16年12月にFOXスポーツ(電子版)に掲載された記事の真相を知りたかったからだ。16年といえば、カーターがブルワーズでリーグ最多の41本塁打を記録したシーズン。タイトルを獲得したにもかかわらず、ブルワーズは来季の年俸の高騰が予想されたこと、そして、韓国で活躍したエリック・テームズと複数年契約を結んだことなどの理由で同選手との契約延長を見送った。打率・222、リーグ最多の206三振という“裏の数字”も影響したのか、他球団との交渉も難航した。そんな中、代理人のデーブ・スチュワート氏は、同サイトの取材に応じ、カーターが日本行きを検討しているとコメント。その名は日本の野球ファンの間で一気に知られるようになった。

 それら一連の出来事を本人に問うてみると、カーターは笑みを浮かべて「あの話は本当ですよ。僕の中では日本も選択肢にしてあった」と明かす。最終的にはヤンキースから1年350万ドル(約3億7千万円)のオファーを受け、キャンプイン直前の2月中旬に合意したが、状況次第では日本でプレーしていた可能性があったことが確認できた。

 さらに後日。関係者への取材で分かったことは17年のオフにも日本球団から連絡があったという事実だ。昨年12月にフロリダ州オーランドで行われたウインターミーティングで日本の3球団がカーター側と接触したという。ただし、正式オファーには至らなかったために日本行きの話は消滅。カーターはエンゼルスとマイナー契約を結び、招待選手としてメジャーのキャンプに参加することを決めた。

 オープン戦には一塁手兼指名打者として出場。主に途中出場ながらここまで20試合で打率・306(36打数11安打)、3本塁打、7打点をマークしている。・900を超えると強打者のカテゴリーに入るOPS(出塁率・366+長打率・639)は堂々の10割越え(1・005)だ。

 昨季のカーターはヤンキースで62試合に出場し、打率・201、8本塁打、26打点の成績しか残せず、7月10日に戦力外通告。同21日にアスレチックスとマイナー契約を結び、3Aで36試合、8本塁打、26打点、OPS・869とまずまずの数字を残したが、再び、メジャーの舞台に戻ることはできなかった。18年のシーズンに向けてオフは自分の打撃を見直し、スイングを修正。「打席の中で考えるのはボールにしっかりコンタクトするだけ。結果は二の次ですね」と話す。

 その言葉どおり、大谷翔平投手らと出場した3月22日のジャイアンツのマイナーチームとの試合では、昨季8勝の左腕ブラクから逆方向の右中間へ豪快な一発。そのスイングは元三振王とは思えない、柔らかささえ感じさせるものだった。

 29日の開幕が近づくにつれ、キャンプに参加している選手の数が減っている。エンゼルスでは22日の夕方にはメジャー登録が可能な40人枠に入っている5選手にマイナー行きが通達され、マイナー契約の招待選手6人に実質的な戦力外通告がなされた。

 オープン戦では結果を残しているカーターだが、マイナー契約の壁は厚い。同じポジションには将来殿堂入り確実なプホルス、そして、同選手のバックアップ要員で三塁も守れるバルブエナがいる。先発投手と指名打者の二刀流を目指す大谷もいる。これら3人のうちの誰かに故障や不振などがない限り、早晩、マイナー行き、もしくは戦力外を告げられることが予想される。

 関係者の一人は言う。「もし日本の球団からいい話があれば、クリスは真剣に日本でプレーすることを考えるでしょう」と。

 再び、メジャーの舞台に立ってほしいという願いと、メジャーのホームランキングが日本の野球にアジャストしていく姿を見てみたいという好奇心。新しいシーズンの開幕を目前にして胸中複雑な自分がいる。(デイリースポーツ・小林信行)

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