【野球】イチローが訴えていた苦悩と44歳でもやれるという自信

 米大リーグ・マーリンズからFAになっていたイチロー外野手(44)が7日(日本時間8日)、古巣マリナーズの入団会見を行った。

 「とてもハッピーです」。メジャー18年目のシーズンを迎えられる喜びを、イチローはかみしめるように表現した。かつて経験したことのない長い期間を要しての移籍先決定。古巣への復帰が決まるまでの間には、苦悩を吐露したこともあった。

 昨年12月23日。イチローの姿は、故郷の愛知県豊山町にあった。毎年この時期に開催される、自身の名前を冠した野球大会閉会式への出席は、オフの恒例行事。しかし、ヤンキースからFAになった2014以来、3年ぶりに所属先が決まってない立場での出席となっていた。

 閉会式でのやり取りは、その日のうちに大きく取り上げられ、話題になった。

 野球少年との質疑応答で、日本球界復帰の可能性を問われたイチローは言葉に詰まりながらも「ゼロじゃない限り可能性がある」と発言。古巣のオリックス復帰やラブコールを送ってきた中日の存在などがクローズアップされた。

 ただ、「可能性がある」という発言以上に印象深かったのは、イチローのその先の話だった。

 「これは質問とは違うことなんだけど」と子どもたちに前置きしながらイチローは続けた。

 「もちろん、来年も野球選手でいたい。ただねえ、アメリカって、なんか44歳っていうのが引っかかるらしいのね」

 「アメリカって仕事の面接とかで年齢を聞いちゃダメなの。だけど、何となく年齢をいうと、44歳のおじさんはどうなの?っていう感じになって…」

 メジャーへのこだわりがあるからこそ、あふれ出てきた言葉だった。

 小学生にも理解できるようにと意識したのか、平易な表現を使いながらも、イチローは自分が置かれている世界の不条理、苦悩を率直に明かしたのだ。

 日本では求人募集に年齢制限があること自体珍しくない。だが、自由の国アメリカは年齢不問、実力主義ではないのか-。イチローの怒りにも似た強い思いが伝わってきた気がした。自分はやれるという自信と誇りが垣間見えた。

 実力が同じなら若い方を使う、という考え方は、現場における、いわばセオリーであり、長期的なビジョンでのチーム編成を考えれば合理的で理にかなったものだろう。日本でもメジャーでも年齢という壁は、やはり存在するのだ。

 そんな現実に直面したイチローが訴えていたのは、過去の実績や年齢とは関係なしに、現状の自分の実力を正当に評価してほしい、そのチャンスを与えてほしいという切なる願いではなかったか。

 所属先が決まらない自分を「ペットショップで売れ残った大きな犬」とも表現したイチローは、かつての所属球団マリナーズとの契約にこぎつけた。

 例年以上に長い期間を日本で過ごしてトレーニングに励み、出陣前のルーティンを済ませて勝負の地へ向かったイチロー。年齢の壁を乗り越え、「野球選手でいたい」という願望のスタート地点についた球界のレジェンドが、その先に見せる姿に期待したい。(デイリースポーツ・若林みどり)

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