【野球】CSで打率5割超えの阪神・大山、“新英才教育”が成長の要因に

MBSラジオ「亀山つとむのスポーツマンデー」に出演する大山(撮影・高部洋祐)
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 阪神・大山悠輔内野手は、プロ1年目のシーズンで確かな成長曲線を描いた。6月18日に初昇格を果たし、その後1軍に定着。DeNAと戦ったCSファーストSでは打率・538、1本塁打、4打点。記録にも、記憶にも残る大活躍でファンのハートをつかんだ。なぜ、22歳の青年がこの1年で飛躍を遂げられたのか-。阪神史上類を見ない“新英才教育”が、要因の一つに挙げられる。

 2月の沖縄・宜野座キャンプ初日から1軍に帯同し、オープン戦では9試合で打率・333、1打点。開幕スタメンの期待も高まっていたちょうどその時、球団から「肉体改造指令」が出された。1軍本隊から完全に離れ、2軍本拠地・鳴尾浜で筋力トレーニングに明け暮れる毎日。日の当たる舞台で活躍する同世代を横目に、地道な鍛錬に身を投じた。

 担当として付き添ったのは、土屋2軍トレーナー。「7月のオールスターくらいまでの計画でね。ウエートトレーニングをほとんどしてこなかったということで、一からやりました」と二人三脚でレベルアップに努めた。白鴎大1年時は腕立て伏せがほとんどできず、懸垂や綱上りもできなかったという。弱点を克服することが飛躍への近道だと信じ、突き進んだ。

 通常の選手は週2回で筋トレをやるところを、大山は週4回で実施。2軍戦に出場していても五回で交代し、そのままウエートルームへ。3試合行うビジター戦も、その内の1試合は鳴尾浜に残留。“特別枠”としてトレーニングに励み、遠征2日目に遅れて本隊に合流していた。

 「ベンチプレスも最初は60キロでヒーヒーいっていたのに、75キロまで上げられるようになったし。食も太い方ではなかったんだけど、時間をかけてでも食べるようにしていた。遠征中は好きなパスタから胃袋に入れて、ジュースなど糖分の多い飲み物は極力控えた。体重も徐々に増えて、力もついていったよね」

 実戦と並行して取り組んでいたことにより、野球に即した筋肉をつけることができた。「吸収力がすごくて、柔軟性も高い。栄養学も学んで、鳥谷みたいに鍛えた体を野球に適応させることができていたと思う」。そして何より、大山の人間性が成長を加速させた。

 「みんなと違うことをやっているんだから、不満の声が出てきてもおかしくない。でも、そういう声は聞こえなかった。大山は周りに気を配れるし、みんなもそれを受け入れていたと思う。大山の人徳だね。そういう部分も、他の選手より優れているところかな」

 1軍初昇格は、予定より約1カ月早い交流戦期間中。それでも日を増すごとに存在感を示し始め、結果的に75試合に出場。打率・237、7本塁打、38打点と長打力も発揮し、球団史上101代目の4番にも座った。鳴尾浜で過ごした3カ月間が確実に大山を変えた。肉体も、それから心も。シーズンを終え、22歳の青年は短い言葉で当時を振り返った。

 「無駄ではなかったというか、いい時間を過ごせたと思います」

 阪神の歴史の中で「前例はなかったと思う」と土屋2軍トレーナー。新たな試みだったが、これまでの活躍を考えれば立派な成功例だろう。“大山式育成法”は、虎の穴を変えるきっかけになるかもしれない。(デイリースポーツ・中野雄太)

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