【野球】ノムさんが球界の主流、捕手併用制に警鐘 広陵・中村奨成を名捕手に-

 近年、捕手の併用制を敷くチームが増えてきた。今季も9月15日時点、セ・リーグで規定打席に到達している捕手は巨人・小林、ヤクルト・中村の2選手。パ・リーグでは1人もいない。

 過酷なポジションだけにレギュラーを固定せず、負担を軽減。配球傾向が増え、投手との相性も重視する。メリットは多いように映るが、この風潮に警鐘を鳴らすのが名捕手であり名将・野村克也氏(82)だ。

 「これと決めたら通さないと。(併用だと)使われたキャッチャーは、前を見て野球をしなくなる。ベンチを見て野球するようになる。監督の高い評価をもらおうとしてね」。指導者としてヤクルト監督時代は古田敦也に英才教育を施し、名捕手に育成した実績がある。近年、球界を代表する捕手不在の背景には、指導者側にも責任があると野村氏は指摘する。

 「キャッチャーの育成だけは、見せかけの信頼が大事。信頼しているよ、っていうね。信は万物の基を成す、っていうのはキャッチャーに当てはめたような格言。キャッチャーを育てたら、チーム作りの半分ができたようなもんなんだ」。

 その野村氏が将来を注目する逸材がいる。今夏の甲子園で大会新記録の6本塁打をマークした広陵・中村奨成捕手(3年)。今秋のドラフト1位候補として高い評価を集めているが、野村氏もその素材にほれ込んでいる球界OBのひとりだ。

 夏の甲子園をテレビ観戦し、打力の評価は二重丸。さらに「一度セカンド送球を見たけど、いい球投げるわ」と、肩の強さにもほれ込んでいる。「ただ野球選手の評価って難しいんだよ。打つ、というのは見える技術。分かりやすい。結果を出せば評価ができる。見えないものをいかに評価するか。中村君、あとは配球だな」。

 球界発展のため、提言を送り続けてきた。現場から離れても、その姿勢は変わらない。「今、配球術を教えられる指導者が何人いるかな。評価する人、指導する人に言いたいのは、中村捕手が根拠を持ってサインを出しているか、そこを見てほしい。変化球でホームランをカーンと打たれたとしても、そのプロセスを見てほしいんだ。ぜひ、いい指導者に巡り会えるよう期待している」。“生涯一捕手”を座右の銘にする野村氏だからこその、強い願いだ。(デイリースポーツ・佐藤啓)

 ◇  ◇

 野村氏はこのほど、新著「私のプロ野球80年史」(小学館)を刊行した。現役時代は通算657本塁打、2901安打をマーク。指導者として3度も日本一に輝いた。プロ野球の歴史とともに歩んできた自身の人生を振り返り、エピソード満載の一冊となっている。

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