【野球】智弁和歌山・中谷コーチが起こしたバッテリーの意識改革

甲子園のベンチ前に立つ智弁和歌山・中谷コーチ(左は智弁和歌山・高嶋監督)
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 かつて全国制覇した元球児がこの夏、指導者として帰ってくる。阪神、楽天などで捕手として活躍した智弁和歌山の中谷仁氏(38)だ。今年4月から母校のコーチとして後輩を指導している。

 プロでの経験を生かした視点で、高嶋仁監督(71)の片腕としてサポート。そんな中谷コーチが起こしたのが、バッテリーの意識改革だ。

 力を入れるのは「ブルペンの内容」だという。「捕手は投手に何を要求するのか。これまでの投球練習では『外角まっすぐ!』とか『内角!』とか、それだけで終わりだった。けれど、例えば外角ストレートで何をしたいのか。空振りを取るのか。どんなボールを要求するのか、何が目的なのかをバッテリーに意識させることを重視しています」と話す。

 同校で主将を務めた1997年夏の甲子園で初優勝し、同年ドラフト1位で阪神に入団。その後、楽天、巨人でプレーし2012年に引退。13年に巨人のブルペン捕手を務め、同年のWBCも日本代表のブルペン捕手として帯同した。3球団と日本代表で多くの投手の球を受けた経験が、母校での指導に生きている。

 高嶋監督は「バッテリーから野球が変わった。自信を持てるようになった。それを意味するように、春季和歌山大会の準々決勝から決勝まで、すべて完封ですよ」と、手応えを強調。中谷コーチが就任して1カ月の同大会では、準々決勝9-0星林、準決勝9-0田辺、決勝10-0和歌山商と、3試合連続完封で制している。

 正捕手の蔵野真隆(3年)は、中谷コーチの改革を強く認識する1人だ。「配球の意識をはっきりさせろと言われる。球種やコースを要求する意図を、強く投手に伝えるように。試合では声がマウンドまで通らないこともあるので、ジェスチャーや構えを大きくして伝えます」と実践する。

 時折、高嶋監督から落とされるカミナリも、前向きに捉えるようになった。「中谷さんから『捕手は怒られてなんぼ。受け止めて、(練習が)終わってから反省しろ』と言われます」と蔵野。阪神、楽天時代に名将・野村克也監督の下でプレーした中谷コーチらしい発想だ。

 同校は11年夏の3回戦進出を最後に甲子園で初戦敗退が続き、昨年は春夏とも出場を逃した。就任4カ月で甲子園切符を手にした中谷コーチは「これまで『和歌山(代表)と言えば智弁和歌山』と言われていた。それが甲子園で勝てないとか、甲子園に出られないという風になっていった。それをクリアできたのはうれしい」と、出場を喜んだ。2年ぶり22回目の聖地。全国の舞台で成果を試す時が来た。(デイリースポーツ・中野裕美子)

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