心残りな北京五輪メダル授与式 坂本花織に言えなかった言葉 あの時の選択はきっと間違っていなかった
「ミラノ・コルティナ五輪・フィギュアスケート女子・フリー」(19日、ミラノ・アイススケートアリーナ)
女子フリーが行われ、今季限りでの現役引退を表明している坂本花織(25)=シスメックス=は、ショートプログラム(SP)、フリーともに2位の合計224・90点で銀メダルを獲得した。個人では前回北京五輪の「銅」に続く表彰台で、同競技では鍵山優真に並ぶ日本勢最多の通算メダル4個とした。今後は指導者として、自身が成し遂げられなかった金メダリスト育成に励む。SP首位の中井亜美(17)=TOKIOインカラミ=が219・16点で銅。世界女王のアリサ・リュウ(20)=米国=が226・79点でSP3位から逆転し、金メダルに輝いた。
◇ ◇
何より一言「おめでとう」と伝えたい。
記者が初めて坂本に会ったのは、彼女がまだ16歳の時。兵庫のローカル大会から五輪まで、たくさん取材をさせてもらった。いつも変わらず一生懸命。世界トップ選手になっても、言葉を選ばずに言えばその辺をフラっと歩いていて、笑顔でおしゃべりしてくれる“みんなのかおちゃん”だった。
今大会、天真らんまんな明るさで周囲を引っ張るキャラクターに注目が集まったが、笑顔は鎧(よろい)。3姉妹の末っ子で、元来決して目立つタイプではない。緊張しいで繊細な気配りの人だ。平昌五輪でも北京五輪でも、裏で胃腸炎に苦しんだ。SPを前に涙を流す様子をテレビで見て「やっぱりそうだよね」と、こちらも苦しくなった。
一つだけ、心残りがある。北京五輪のメダル授与式のこと。北京では競技直後ではなく別会場でセレモニーが開催され、そこで初めてメダルを受け取った。坂本が個人戦の銅メダルを手にした直後。金メダルを受け取る高木美帆を見に、ステージが見える報道陣の動線へと移動してきたのだ。「おめでとう」と声を掛け、2人で君が代を聞いた。「4年後は…」そう言っていた。胸に輝くメダルを横目で見た。
でも…。中野コーチを差し置いて、私が先にメダルを触るわけにはいかないと思い「見せて」とは言えなかった。少しだけ心残りがあるけれど、必ず「どうぞ!」と言ってくれる人だから、あの時の選択はきっと間違っていなかったと思う。(デイリースポーツ・16~22年担当・國島紗希)
