【五輪サイドストーリー】ハーフパイプ金の戸塚や平野流ら躍進支えた陰の金メダリスト 元日本代表で現ヨネックス開発担当・口寸保頼央さん
「ミラノ・コルティナ五輪・スノーボード男子ハーフパイプ・決勝」(13日、リヴィーニョ・スノーパーク)
3大会連続出場の戸塚優斗(24)=ヨネックス=が、トリプルコーク1440のコンボを含めた異次元ルーティンで悲願の金メダルを獲得した。また他の日本勢では山田琉聖(チームJWSC)が3位、平野流佳(INPEX)が4位、平野歩夢(TOKIOインカラミ)が7位。上位を締め、日本勢の強さが光った。
ハーフパイプ日本代表勢の躍進を陰で支えた人がいる。ヨネックス製品開発部で日本代表選手が使用するスノーボードの開発をしている口寸保頼央(くちすぼ・らいお、24)さんだ。元ハーフパイプ日本代表で、同級生の平野流、戸塚とは小学生時代から競い合ってきた仲。24年からヨネックスに入社し、今回の五輪では自身が開発に携わった板に乗った親友が躍動した。
口寸保さんと戸塚と平野流はいつも一緒だった。小学2年生の時、同じおもちゃを3人とも持っていたことが仲良くなったきっかけ。青木亮コーチに指導を受け、合宿ではシングルベッドを強引に3台並べた部屋でともに寝泊まりし、その日に撮影した練習動画やYouTubeを見て「明日はこの技やってみようぜ」などと“ハーフパイプ談議”に花を咲かて育ってきた。
鎖骨の骨折で北京五輪への挑戦が閉ざされてしまった22年に、ヨネックス関係者から声をかけられ、引退とともに選手を支える側に回ることを決断。現在は工場と連携しながら、選手に合う板を作る仕事に取り組む。
大事にしていることは、1本目の乗り心地を抽出すること。日本代表クラスは適応能力も高いため、2本目を滑ると板に合わせた滑りができてしまうからだ。選手には「何でもいいから感じたことを教えて。とりあえず言葉にして」と伝え、「重い」「反発が強い」「回転しにくい」など抽象的な言葉でもヒアリング。自身の競技経験を生かして選手の悩みをひもとき、板の固さ、重心の位置、カーボンの比率などを調整している。
試作した板は選手に渡す前に、自ら乗って技も実施。ヨネックス関係者は「うちで働いた人の中で、口寸保ほど高いレベルで競技をやっていた人はいない。高い次元で選手の情報を吸い上げられるようになった」と品質向上の手応えを語った。
戸塚は固い板を好む。反発が強くなるため普通の選手なら扱えないが、口寸保さんは「優斗はすごい足の使い方がうまい」と理解しているため、試作を経て昨夏の前には五輪用の固い板を提供。戸塚は「自分にあった固さだと壁の最後に勝手に上に上げてくれる。バネがついたみたいにスパっと上がる」と、自分の強みを最大限に生かしたスノーボードで夢舞台に臨むことができた。
現役時代とは違う立場でミラノ・コルティナ五輪を迎えた口寸保さん。戸塚は悲願の金メダルを獲得し、平野流は4位で表彰台こそ届かなかったが全選手で唯一3本全てで90点をマークする圧巻の滑りを見せた。「開発者としては本人たちが望む結果じゃなかったとしても次につなげることが使命。でもやっぱり金メダルを取ってほしいですよね。報われてほしい」。親友2人の奮闘の足元で、口寸保さんの板も五輪で輝いていた。
