村田、48年ぶり金の「奇跡的」偉業

 「ロンドン五輪・ボクシング男子ミドル級・決勝」(11日、エクセル)

 村田諒太(26)=東洋大職=が、E・ファルカン(22)=ブラジル=に14‐13で判定勝ちし、日本選手として1964年東京五輪のバンタム級を制した故桜井孝雄氏以来、48年ぶり2人目の金メダルを獲得した。世界でも選手層の厚いミドル級は日本人五輪メダリストの中でも最重量。村田は厳しい階級で金字塔を打ち立てた。プロからの熱視線を浴びる中、今後について明言を避けた。

 激闘を終え、現地の深夜11時前、表彰台のど真ん中で、村田はロンドンに流れる『君が代』を聴いた。自身は11年7月のインドネシア大統領杯以来2度目。五輪に限れば、明治時代の1904年セントルイス五輪から実施されたボクシングの1世紀を超す歴史の中、日本人として2人目の偉業を遂げた男に涙はなかった。

 決勝の舞台に「ボクシングができる幸せ」をかみしめ、満面に笑みを浮かべて入場。胸の前で十字を切ってからリングイン。紙一重の接戦に終了のゴングとともに、両拳を突き上げて勝利をアピールした。勝者のコールを聞いて初めて、安どの表情を浮かべた。

 勝因は「最後に崩れないスタミナ。あとは神様が僕に味方してくれていること」と言った。48年ぶりの快挙にも「僕はただ少しの才能と努力があっただけ。何より僕にボクシングを教えてくれた武元先生こそがたたえられるべき」と、南京都高時代の恩師で10年2月に50歳で死去した武元前川さんの名を挙げた。

 職場の先輩だった妻・佳子さん(30)にも支えられた。北京五輪後に引退も、再びロンドンを目指して復帰した際、自宅の冷蔵庫に『五輪で金メダルを取りました。ありがとうございます。村田諒太』と書いた紙を貼り、夫を鼓舞。妻は「引退後の諒太は抜け殻だった。本当にこの人はボクシングが好きなんだと。冷蔵庫の言葉で主人を駆り立てた」と明かす。

 今後の進路は『三択』。アマで現役続行、プロ転向、引退して指導者の道。「ここがゴールなら感動して泣き崩れてるかもしれないけど、そういう感情も浮かばなくて」と現役続行を示唆する一方、「憧れの武元先生と同じように僕みたいな五輪選手を育てることが金メダルよりも(プロの)世界王者よりも価値がある」と指導者にも意欲。今は白紙だ。「これ(金メダル)が僕の価値じゃない。これからの人生が僕の価値。恥じないように生きていくだけ」。その姿勢にブレはない。

 いずれにしても進路は「ちょっと考えてから。今は家族旅行がしたい」。今はただ“世界最強のパパ”として東京で待つ1歳の長男・晴道ちゃんとの再会が楽しみだ。

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