芸能界で「お母さん」と慕われ、国民栄誉賞も受賞した国民的女優・森光子さんが１０日、静かに息をひきとった。９２歳だった。２０１０年２月に滝沢秀明との共演舞台を無事に終え、直後の同２月末にライフワークだった舞台「放浪記」の５、６月公演の中止を発表。表舞台から姿を消していた。

　その後、一度だけメディアに登場したことがあった。無念の公演中止発表の約２カ月後、２０１０年５月５日に放送された日本テレビ・読売系の特別番組「天才じゃなくても夢をつかめる１０の法則ＰＡＲＴ２」だ。森さんはここで、カメラの前で日課にしているスクワットを元気に披露し、健在ぶりをアピールしていた。

　インタビューが収録されたのは４月２２日。５月９日の９０歳の誕生日を目前に、久々にカメラの前に登場した森さんは、体調を心配する声を吹き飛ばすように、パワフルなパフォーマンスを披露した。

　「スクワットは今でもやってますよ。前は１日２００回やってましたけど、今は１００回に減っちゃいましたけどね」。インタビュー時、薄いふじ色の着物に身を包んでいた森さんは、突如、草履を脱ぎ捨てたそして、じゅうたんの上で足を踏ん張り、体を上下に１回、２回、３回…。スタッフが止めるまで、森さんは１０回ほどスクワットを続けてみせて、「こういうのは（番組内でも）早めにやっていた方がいいんです」と何事もなかったかのように涼しげな表情を浮かべた。

　番組では、放浪記２０００回上演の偉業を達成した森さんの、芸能人生が紹介された。「今までで一番のご苦労は？」と聞かれると、「苦労は覚えていません。忘れちゃうんです。それが長く続ける秘けつかもしれません」と打ち明けていた。

　親交を深めていたジャニーズのメンバーも驚く体力と精神力。舞台では軽快なステップやでんぐり返りも披露した。生涯最後の舞台となった２０１０年２月６日、東京・帝国劇場の「新春　人生革命」千秋楽で、森さんは「朝晩７５回ずつ、１日１５０回のスクワット」をしていることを明かしていた。