「秋季高校野球近畿大会・準々決勝、明石商７－０市和歌山」（２５日・皇子山球場）

　３２年ぶりの近畿大会出場となった明石商が市和歌山を七回コールドで下し、春夏通じて初の甲子園出場に当確ランプをともした。

　エース・吉高荘投手（２年）が、連投にもかかわらず７回無失点の快投。朝起きた瞬間、右肩が上がらなかった。前日の１回戦で１６０球超を投じたダメージが残り「夏の決勝の時くらい張っていた」と言う。

　それでも「行けるところまでは行こうと思った」と立ち上がりから余分な力が抜け、逆にボールが走った。危なげなくスコアボードにゼロを並べ続け、味方打線が先制した直後の七回には無死二塁のピンチを背負ったが、ボールを丁寧に低めに集めて無失点で切り抜けた。

　直後に味方打線が一挙６点を奪ってコールド勝ち。「最後は気迫で投げました」と吉高は満面の笑みを浮かべる。今夏の兵庫大会決勝では滝川二に敗れ、あと一歩で甲子園出場を逃した。喪失感から「もう投げたくなかった」と明かし、野球を辞めることも一度は頭をよぎった。狭間監督からは決勝戦後に「１人で背負いすぎている」と厳しい言葉を投げかけられた。

　それでも「みんなのために投げようという強い気持ちを入れ直した」。支えてくれた、一緒に頑張ってきたチームメートのために投げようと心に決めた。兵庫大会を制し、近畿大会で４強に進出したことで来春のセンバツ出場に当確ランプをともした。

　１８日に１７歳の誕生日を迎えた際にはチームメートからたくさんのお菓子をプレゼントされたという。身長１６９センチと決して大きくはないが、近畿でもトップクラスといえるボールのキレと制球力で公立校をセンバツ確実の場所まで導いた。つらい経験を乗り越え、人間的にも成長を果たした吉高。すべてはチームのために－。そう思えたからこそ、最高の結果が用意されていたのかもしれない。