昨季最下位のロッキーズが躍進

 昨季ナ・リーグ西地区最下位のロッキーズが獅子奮迅の働きで8連勝と波に乗っていたが、この日、日本時間22日(現地時間21日)は3回に先制3点、6回の1点と9回表まで4‐3のリードも守護神ベタンコートに代わって昨季アストロズで10セーブを挙げたW・ロペス(29)の投入が裏目に出て、4‐5の逆転負けして9連勝を逃した。

 13勝5敗、勝率・722。この日、2位ジャイアンツが勝利し、1・5差に詰まった。明日からは本拠地で東地区トップのブレーブスと首位対決だ。

 さて昨年、最下位の責任を取って辞任したJ・トレーシー監督(元大洋)の後任、新指揮官W・ワイス監督は1985年、アスレチックスからドラフト1巡目指名で入団した好守好打の遊撃手。88年に新人王に輝いた名手だ。

 打撃面では選球眼のいい出塁率の高い選手で、私もオークランド、コロラドで数多くの試合を観戦したが、非力で本塁打の少ない打者だった。ロ軍移籍後の95年、クアーズ・フィールドの左翼越え本塁打を放ったのを見て驚いたことがある。打者有利な”バッターズ・パーク”と言われる所以だろう。

 内野手出身だけに采配の妙がある。このまま突っ走れば、先輩のダン・ベイラー、ジム・トレーシー、クリント・ハードルに続き、4人目のポストシーズン進出監督になれるかもしれない人材だ。

 一方、新任D・ビシェット打撃コーチの指導力の評価も高そうだ。先発メンバーの中軸に打率3割は4、5名いる。ロ軍OBで、クアーズ・フィールド開場1年目の95年に俊足、強打の外野手として本塁打王と打点王を獲得した筋骨隆々の”ムキムキマン”だ。

 実はこの男、私とは昵懇の仲で、エンゼルス在籍時(88~90年)のレギュラーになれない頃に「お前の球団でプレーさせてくれ」と本気で打診してきたことがあった。その後92年のエクスパン(球団拡張)ドラフトで93年創設のロ軍に移籍。本拠地のマイルハイ球場(所在地は標高1600メートル)に彼を訪ねた。打撃練習中のグラウンドで挨拶を交わすと、笑みを浮かべて「もう日本でプレーしないよ」と、メジャー専念を誓った。私には「釣り落とした魚は大きいかった」が、素敵な出会いだった。

 このロ軍に在籍したトレーシー監督と現在、在籍中のラファエル・ベタンコート投手(38)は、小生がそれぞれアストロズとレッドソックスから苦労しながら獲得して大洋に入団させた外国人選手だ。

 トレーシーは83年に入団。打率・303、本塁打19、打点66をマーク。「トレちゃん」の愛称で親しまれた。だが、翌84年の開幕3戦目(横浜)のヤクルト戦で深追いした二塁手と交錯し、右飛球を落球。これが決勝点となり、敗戦の責任を転嫁された。その悔しさで、長男(1歳)と奥さんを伴い成田空港から帰国した。

 一方のベタンコートは99年の秋にフロリダ州マイアミ空港ホテルで代理人と交渉し、契約を結んだレッドソックスの有望株。00年に横浜入団。昨季は1勝4敗31セーブ、防御率2・81を挙げ、38歳になった今季は1勝7セーブ、防御率1・93と守護神として活躍中だ。

 この両者、大洋・横浜では監督とそりが合わず、ベタンコートは、わずか10試合に救援登板し、追われるよベネズエラに帰国した。

 トレーシーは指導者としてメジャーで成功を遂げたし、ベタンコートは現役で活躍している。あえて日本での監督名は伏せておく。読者の皆さん、推測してください。

 さて、今季のロ軍打線ではD・ファウラー外野手(27)に注目だ。04年ドラフト14巡目指名で入団のジョージア州アトランタ出身の俊足・強肩の中堅手。09年から12年まで50三塁打をマーク。09年のパドレス戦では5盗塁の新人記録持つ。08年の北京五輪では銅メダルに輝いたスピードスターだ。

 チーム1位の打率・364で打順3番のC・ゴンザレス左翼手(27)は本塁打4、打点11と出塁率がいいのが魅力だ。

 11年オフにツインズから3年総額3150万ドル(約29億9250万円)で入団のM・カダイヤ一塁手(34)は、現在リーグ7位の打率・333、本塁打3、打点13と上昇の兆し。さらに、ミートの巧みなT・トゥロウィキー遊撃手(28)は昨季の左太もも手術から完全復帰し、現時点で打率・328、6本塁打、打点17と復調しているのが心強い。

 投手ではベネズエラ出身の先発右腕J・チャシーン投手(25)がツーシーム主体の速球とスライダー、チェンジアップ、カーブを織り交ぜるピッチングで今季3勝0敗とエース格に働きだ。

 ドミニカ出身の先発左腕J・ニカシオ投手(26)は昨年2Aからメジャー昇格。打球を顔面受け故障。再登板の6月に痛烈なピッチャーゴロを捕球する際、左足を骨折するなど不運に見舞われたが、今季は191センチの長身から繰り出す155キロ台の速球とカッター、スライダーを主武器に2勝0敗と健闘している有望株。

 ガーランドも2勝0敗、先メキシコ出身の発左腕J・デラローサ(32)もツーシーム、フォーシーム、チェンジアップを武器に一翼を担う。

 さらに、セットアッパーのM・ベライル(32)、R・ブラザース(25)はキレの鋭いスライダーと150キロ台のフォーシームを武器にする。昨季は救援で75試合に登板した。ワイス監督も大きな期待を寄せている。

 オールスターまで首位をキープできれば面白い存在になりそうだ。

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 牛込惟浩(うしごめ・ただひろ)1936年5月26日生まれ、76歳。東京都出身。早稲田大学を経て64年、大洋ホエールズに入団。渉外担当としてボイヤー、シピン、ポンセ、ローズなど日本球界で大活躍した助っ人たちを次々と獲得し、その確かな眼力からメジャー球界から「タッド」の愛称で尊敬された。2000年に横浜ベイスターズを退団。現在はデイリースポーツMLB解説委員。

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