「俗世にいながら才気を放つ」…制作統括が語る、秋山格之介(高良健吾)の絶妙な人物造形と“劇中作品名”のひみつ【ブラッサム】
連続テレビ小説『ブラッサム』(NHK総合)第5週の週タイトルは「狂騒で、東京」。帝大に通う保(金子大地)の世話係として上京した珠(石橋静河)は本郷の下宿部屋で共に暮らし、保に背中を押されて再び小説を書きはじめる。そんな折、保の父の病気が悪化。治療費が嵩んだため、仕送りが止まってしまった。
珠は家計を助けるために、下宿近くにある西洋レストラン「悠樂軒」で女給として働きはじめる。悠樂軒は名だたる文豪や編集者たちが集う店で、さながら文芸サロンのよう。ここで働きながら珠は日々「書くこと」の原動力となる刺激を受けていく…。
■ 強烈キャラの編集長や今をときめく小説家と遭遇10月28日に放送された第23回では、売れ行き一番の文芸誌『首都公論』の編集長・黒崎(遠藤憲一)と副編集長の山中(井浦新)が来店。
黒崎はビフテキ、カツレツ、コロッケ3つ、サンドイッチを注文し、「仕事っていうのはな、胃袋で決まるんだ」と持論をぶちながら完食して帰った。飛ぶ鳥を落とす勢いの『首都公論』の威力を見せつけられ、珠は圧倒される。
また別の日には、珠が先日「ぶくぶく堂」ですれ違った人気作家・秋山格之介(高良健吾)が来店する。コーヒーに角砂糖を8つも入れるようにオーダーし、「ドロッドロのを飲むと頭が冴えるんだ。徹夜で締め切り間に合わせたからね」と話す秋山。
顎に手を当てるポーズが「あの作家」の著者近影によく似ている秋山は、『羅城門』『蜘蛛の巣』などのヒット作を生み出したとのことで、芥川龍之介をモチーフとしていることがわかる。秋山キャラクターを造形するにあたっての工夫を、制作統括の村山峻平さんに聞いた。
■ 秋山は「ナチュラルなふるまいなんだけれど、近づけない領域がある」芥川龍之介という世界的に著名な作家をモチーフにする場合、過剰に“作家然”としすぎても興ざめするし、控えめすぎても誰だかわからない。匙加減が難しいのではないだろうか。村山さんはこう話す。
「そこは難しくて、高良さんとも演出とも話し合って秋山という人物を作っていきました。秋山は決して居丈高ではない。女給の珠に対して偉そうに振る舞わないし、おもねるわけでもなく、ごく自然にスマートに接するんですね。だからこそ逆に『ああ、これが作家先生というものか』と思わされるといいますか。
『ナチュラルなふるまいなんだけれど、近づけない領域がある』という絶妙なところを高良さんがとても素敵に演じてくださいました。それでいて、独特のユーモアがある。秋山はものすごくカッコいいことを言っているはずなのに『なんか面白い』んですよね。
東京という、岩国とはまったく別の色の世界観を、秋山を演じる高良さんが出してくださったなと思いました。珠も新しい世界の洗礼に、ワクワクしているのだと思います」。
高良健吾の起用理由については、
「高良さんは見る側を豊かにしてくれる俳優さんで、ご一緒するのがとても楽しみでした。主人公に対して独特の感情をぶつけてこず、ニュートラルに接しているのに、なんともミステリアスで魅力的。俗世にいながら小説家として才気を放つ秋山として、とても説得力があると思いました」とコメントした。
■ 劇中に登場する著作タイトルはどうやって決めている?ところで、秋山の作品タイトルを『首』『羅城門』『蜘蛛の巣』など、実際に芥川龍之介が残した作品を少しアレンジして劇中に登場させている。対して、第1回で登場した“葉野珠の著作”は『生きて行く私』と、宇野千代の著作の実名に同じ。この違いについて聞いてみた。
「『ブラッサム』の世界の中に登場する著作で実名と同じタイトルにしているのは宇野千代さんの作品のみ、そのなかでも何点かです。このドラマはあくまでも葉野珠の人生を描いたフィクションですが、珠の人生とモデルである宇野さんの人生が交差する重要なポイントで出てくる著作については、宇野作品の著作権の継承者の方ともお話し、ご理解いただいたうえで、実名と同じにさせていただきました。なので、今後珠が書くものにはドラマオリジナルの作品名も出てきます。
珠の著作以外のものはすべて、ドラマオリジナルの作品名にしています。秋山の著作については、モチーフとした芥川龍之介の著作と全く別のものにしてしまうと何も想起できませんので、『何を象徴しているのかを、なんとなく予想できる』作品名とさせていただきました。
昔に比べるとどうしても、文学というものが遠い存在になりつつある現代において、視聴者の皆さんに『文学ってもっと身近で、間口の広いものなんだ』ということを感じていただければ、という思いでドラマを作っています」。
明日放送の第24回では、珠が『首都公論』編集長・黒崎に、ある“アタック”をする。人格形成の基盤となった「岩国編」に続いて、「東京編」は珠の作家としてのスタート地点となりそうだ。
取材・文/佐野華英
(Lmaga.jp)
