これ、なんて呼んでる? 電車内に「お好み焼きのアレ」がずらり…大阪メトロで見つけた”大阪すぎる広告”
「Osaka Metro(大阪メトロ)」に乗車した際、ふと掴んだ吊手(つり革)に視線を奪われた。
「急停車することがあります。テコにおつかまりください」
お好み焼きのPRならまだしも、まさかの「テコ」推し。しかも、つり革をテコに見立てるという力技に、思わずツッコミたくなった。色々と気になったので、広告主である創業50年以上の老舗お好み焼き専門店「千房」(本社: 大阪市浪速区)の営業推進本部・小山本部長に、この広告が生まれた背景を訊いてみた。
■「コテ・テコ ・ヘラ」論争に終止符?--印象的な広告ですが、どのような発想から生まれたのでしょうか?
今回の広告は、店舗送客目的ではなく「千房」というブランド名の周知を目的として企画を進めました。そのなかで「千房のお好み焼は美味しい」「千房はお得」などではなく、大阪企業らしいユーモアのある広告で認知されることを目指しました。
そこで、普段から「コテ・テコ ・ヘラ」などと呼ばれ、論争を呼んでいた”お好み焼きを返す道具”に焦点をあてて「千房ではテコ」を認知してもらうことを通じて、自店のブランドも印象に残ってもらえるように考えました。
--大阪ではすでに知名度の高い「千房」ですが、あらためてこのタイミングで広告を掲出された理由は?
『2025年大阪・関西万博』が開催され、他府県からの来阪者も多くなるこの機会に、千房を少しでも多く知ってもらいたいと考え「御堂筋線」での広告掲出をおこないました。
■ 御堂筋線「1車両だけ」の仕掛け・・・期待していた反響は?--企画段階で悩まれた点や、調整が大変だった部分はありましたか?
シンプルさとインパクトの両立に試行錯誤しました。複雑な情報を避け、つり革という限られたスペースで一瞬にして意図が伝わる、シンプルな表現にすること。しかし、シンプルすぎるゆえに、広告の意図(千房のブランド認知)がぼやけないよう、「千房ではテコ」というメッセージを際立たせるバランス調整に苦心しました。
単なる商品広告ではなく、大阪企業らしいユーモアと議論の余地があるテーマを選ぶことで、見る人に「クスッ」とした笑いやちょっとした議論(「コテだ」「いや、テコだ」など)を生み出すきっかけ作りになるようにと、心がけました。「つり革を『テコ』に見立てる」という発想の飛躍自体を、強いインパクトとして活用しました。
また、御堂筋線という路線にもこだわっています。大阪の中心を走る路線なので、地元の方々には「あるある」と共感してもらい、他府県の方々には「大阪らしい」と感じてもらえるような、地域文化に根ざした題材を選びました。
--なるほど、大阪へのこだわりが強く感じられます…!実際の反響はいかがですか?
店舗では、「あの御堂筋線の広告、面白かったね」「あれはテコやなくてコテやろ!」など、お客様がスタッフに直接声をかけてくださる場面がありました。正直なところ、当初期待していたSNS上でのバズりは残念ながらありません・・・(笑)
千房の願いとしましては、「これテコらしいで」「いや、コテやろ!」などと話題にしていただいたり、特に大阪の方々には「また千房さん、面白いことやってるな」と、大阪らしいユーモアとして受け止め、親近感を持っていただければ光栄です。
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一見、「なんで電車にテコやねん」と疑ってしまいそうな千房の吊手(つり革)広告。そこには、遊び心に溢れ、おしゃべり好きでお笑い好きな大阪人気質がたっぷりと詰まっていた。とはいえ、電車の走行中に急停車はつきもの。しっかり”テコ”につかまり、安全な乗車を心がけたい。
同広告の掲出場所は、Osaka Metro「御堂筋線」の1編成目の1車両のみで、1日7本程度の運行(運行情報・時間等については非公開)。期間は2026年4月まで(予告なく変更・中止となる場合あり)。鉄道会社や駅係員へ問い合わせても情報公開はされていないのでご注意を。※車内での携帯電話の利用マナーにご協力ください。
取材・文・撮影/緑川翠
(Lmaga.jp)
