映画『宝島』で窪田正孝、広瀬すずとの壮絶な長回しシーンの裏側明かす…主演の妻夫木も驚き「あ、ここまでやるんだ、と」
アメリカ統治下の沖縄を舞台に、消えた英雄を追い求める若者たちの姿を描いた映画『宝島』(9月19日公開)。そんな同作の合同インタビューが大阪市内でおこなわれ、窪田正孝が出席。広瀬すずとの壮絶な共演場面について語った。
■「企画書の段階からすごい熱量とたぎるようなメッセージが」『宝島』は、米軍基地から物資を奪って住民に分け与えるグループ「戦果アギヤー」としてかつて活動していた若者たちが、混沌とした時代の中、未来を切り拓こうとする物語。窪田が演じたのは、「戦果アギヤー」のリーダーで町の英雄だったオン(永山瑛太)の弟・レイ。もともとは、「戦果アギヤー」の仲間だったグスク(妻夫木聡)、オンの恋人のヤマコ(広瀬)らと行動を共にしていたが、次第に距離を置くように。そして、抱いていた葛藤が暴力として発露される。
窪田は「企画書の段階からすごい熱量とたぎるようなメッセージがありました。脚本を読んだときは、これをどういう風に具現化させるんだろうって。『すごいことが書かれているけど、どうするんだろう』と。でも、大友さんだからやっちゃうんだろうなと思いました」と大友監督への信頼があったという。
■ 広瀬すずとの壮絶な長回しシーンに、妻夫木聡も驚き中でも強烈な印象を残すのが、レイが、ある出来事の後にヤマコの自宅へ押し入る場面。レイの行き場のなさや奥底にあった気持ちが、凶暴性を持ってそこであふれ出る。レイ、ヤマコの感情の衝突を、窪田、広瀬が鬼気迫る演技で表現。いや、どこまでが演技で、どこからがそれ以上の“なにか”なのか分からない。それが長回しで撮影され、より生々しく伝えられる。
窪田が「あの撮影って一回で終わりましたっけ?」と尋ねると、合同インタビューに同席していた妻夫木聡は「いや、2回撮っていたよ」と一言。二人のそのやり取りからも、記憶も曖昧になるほど気持ちが入り込んでいた場面であることが分かる。撮影時について窪田はこのように振り返る。
「いろんなものが変わっていってしまうきっかけになる場面ですし、あの撮影は心情的にあまりなにも考えられませんでした。撮影前の段取りのときは、まず(ヤマコの自宅の)台所へ押し入るから、レイの状況的に『靴を履いて上がり込まないだろう』とか、広瀬さんはどういう風に動くのかなとか考えました。だけど本番になると力が入って、そういうものはなくなりました。この考える余裕のなさが大友組なんですよね。そして、そうやってこの『宝島』はできているんです」。
妻夫木も「あの場面の窪田くんと広瀬さんを見て『あ、ここまでやるんだ』と、後々のシーンに向けてこちらも覚悟が決まりました。あと、大友監督が『ここはもう、ダーッといきましょう』と言っていたんです。それを聞いて『もしかして、(カットをかけずに)一回で撮るつもりなのか』って」と驚いたと話す。
あらためて窪田は、「あの場面でレイのなかにあったのは、目の前にいるヤマコに『自分のことを分かって欲しい、俺を見て欲しい』という気持ちだけ。誰も自分のことを見てくれないし、なによりあの時代は、彼にとっては暴力でしか自分を突き動かすことができなかった。言葉でいくら伝えても伝わらない。そのど真ん中でレイは生きていましたから。きっと、見る人の心を動かす場面になっていると思います」と力を込めて語った。
映画『宝島』は9月19日より全国公開される。
取材・写真/田辺ユウキ 写真/バンリ
(Lmaga.jp)
