「火星の石」はなぜあるの?万博・日本館の展示 これから行く人必見の見どころ解説
現在開催中の『大阪・関西万博』の会場内で、開催国として最も大きな面積のパビリオンを展開する「日本館」。「循環」をテーマにし、展示はもちろん建物やユニフォームにもテーマに沿ったこだわりが。
ただ「展示がやや難しい」と言う声も一部あるようで、スマホで音声ガイドを聞きながら観覧すると、展示内容に理解が深まるのだが、利用している人が少ないような・・・。そこで音声ガイドなしでも展示の意図が理解できるよう、館内の見どころなど、訪れる前に知っておくべきポイントを解説する。
■ 3つのゾーンを「循環」するようにぐるりと一周この世界に存在するあらゆるものが、カタチを変えながら循環していることを展示する同館。すべてはぐるぐる回っていて、建物も丸い形状になっている。始まりや終わりがないので、3カ所ある入り口のどこから入ってもOK。実はこの入り口は日によって変わり、どこから見るかで、印象も変わるつくりとなっている。
各展示のスタート地点には、これから見る展示がどの部分なのかがわかる光る砂時計が設置されている。「水」から「素材」に変化する砂時計なら、水や二酸化炭素が、さまざまなものに生まれ変わる「Farm」エリアということに。
このエリアで活躍するのは、細菌や藻類だ。かわいい見た目も話題の32種類の藻類になったキティちゃんもここに。ポテンシャルが高い藻類についての展示を見ながら、藻類を活用した未来を考えていく流れだ。
そしてこのエリアでは、実際に藻類が育てられている。幻想的な光るグリーンのチューブが張りめぐらされた空間はまるでフォトスポットのようだが、実はチューブのなかで藻類が成長中。
次のエリアは生まれた「素材」が「もの」になる「Factory」エリア。ロボットが3Dプリンターで、藻類を混ぜた自然に還せるバイオプラスチックを出力し、スツールを作る工場が現れる。
このスツールは、館内のあちこちに置いてあるので、ぜひ一度座ってみてほしい。グラデーションカラーになっているのは、混ぜ込まれる藻類の分量の違いから。このエリアには、日本のものづくりをドラえもんが紹介する展示もある。
3つ目は、ものが「ごみ」になり、「水」に分解される「Plant」エリア。建物の外にある「バイオガスプラント」では、実際に万博会場から回収された生ごみを、微生物の力でバイオガスや水に分解している。その分解のイメージを、音と光の点滅で表現したアート作品「光のガーデン」の展示が幻想的だ。
そして浄化された水が、日本館の中央にある円形の水盤に流れ込み、また「水」から「素材」へと生まれ変わる「Farm」エリアにつながっていく・・・と循環していく。
世界最大級の火星由来の隕石(火星の石)もここに展示。日本の観測隊が2000年に南極で採取した後、万博で初の一般公開となった貴重な石だ。7月13日からは、この「火星の石」を見た人たちに、「火星の石」観覧証明カードの配布もスタート。カードは3種類のデザインをご用意しており、配布時期によりデザインが異なる(なくなり配布終了)。
なぜこの場所に、火星の石が展示されているのかを質問すると、「火星の石に、水があったとされる粘土鉱物か含まれていました。水があったということは、火星でも水が循環するということに。いつか生命も火星で生きていけるのではないかということで、ゴミから水への展示に含まれています」と広報担当者。なるほど、火星での未来を見据えての設置だったようだ。
さらに、木製建材CLTを再利用しやすいように使った同館の建物自体も、循環を前提に設計されている。基本・実施設計を担当した「日建設計」の高橋秀通さんは、「万博の設計では解体を前提とした仮設建築として、少ない材料で、作りやすく壊しやすい、再利用しやすい建物として設計すること」がポイントだったと話す。
今回紹介したように、今見ている展示が、循環のどの部分なのか意識すると、より楽しめるはず。館内には、今回紹介していない展示がまだ多くあるので、そちらにも注目を。日本館の観覧は、事前予約、当日登録(予約)のほか、朝9時半と夜7時に事前予約なしで観覧できる(どちらも定員になり次第終了)。
取材・文・写真/太田浩子
(Lmaga.jp)
