安蘭けい「最強の喉」目指し再挑戦
安蘭けいが昨年ヒロインを務め好評を博したミュージカル『スカーレット・ピンパーネル』が、11月に早くも東京と大阪で再演される(大阪公演:11月13日~15日・梅田芸術劇場 メインホール)。本作は、フランス革命下に生きる男女の愛憎を絡めた、胸のすく冒険活劇。宝塚歌劇団星組トップスター時代に主役のパーシー・ブレイクニーを熱演し、「トップとして海外ミュージカルに出演したいという夢を叶えてくれた思い入れのある作品です」と言う安蘭に話を聞いた。
──昨年の公演は、宝塚歌劇版とは違うブロードウェイ版を基にした世界初の新バージョンで新鮮でした。
宝塚版にはピンパーネル団にそれぞれ恋人がいるなどロマンチックな面が結構ありました。新しいバージョンでは、深い人間的な面が描かれていると感じます。再演では一部キャストがガラッと変わるので、新しい『スカーレット・ピンパーネル』を楽しんでいただきたいです。
──パーシーを演じられただけに、ヒロインのマルグリット役を引き受けるのはある意味挑戦でしたか?
ファンの方々のイメージを壊すことになるのではないかな、私が出ないほうがいいのではないかな、と最初は思いました。それでも出演を決めたのは、「この作品が好き」という思いです。曲が素晴らしいのはもちろん、最後は気持ちよく終わる痛快なところが魅力。パーシーも女性の目であらためて見ると、イギリス貴族でお金持ちというだけではない、器の大きさが魅力的です。どんな危険を冒しても罪のない人を助ける正義感は、本当に格好いいですよね。
──パーシーはその正義を貫く計画のため、マルグリットに冷たい態度もとりますが・・・。
2人の幸せが結婚式までの冒頭10分ぐらいで終わります(笑)。その後はずっとお互いを疑っている。「ひとこと言えば解決するのに!」と思うけど、そこまでお互い信じ切れていなかったんでしょうね。2人は出会ってすぐに結婚したので、相手のことをそれほど知らず、結婚してから関係を築き上げていこうとしていたのだと思います。
──マルグリットが、より多面的に描かれているのも印象的でした。
彼女がフランス革命でショーヴランと一緒に活動していた部分が、宝塚版以上に描かれているので、三角関係がより見えますよね。弟との関係性も深く描かれ、家族想いなところも感じました。
──二刀流で勇ましく戦うシーンもありましたね!
そうなんです、演出のガブリエル・バリーさんが、「これはほかの国(バージョン)ではあり得ないよ!」とおっしゃって。(元男役ならではだと)納得でした(笑)。
──ダークヒーローを演じることも多かった安蘭さんですが、ショーヴランを演じてみたいと思われたことは?
パーシーを演じながらショーヴランもいいなと思っていた記憶があります。黒づくめで、歌う曲も格好いいので。マルグリットは、共に闘う同志だったショーヴランに見えない絆は感じていたと思う。でもそれは男女の恋愛ではなかったと想像しています。そこに初恋の人のようなパーシーが現れ、ショーヴランはすっかり過去の人に。女性はそういうところありますよね(笑)。
──安蘭さんの声をイメージしてフランク・ワイルドホーンさんが作曲された曲『ひとかけらの勇気』が、違うタイトル(『悲惨な世界のために』)になり今の世にも訴えるような歌詞になっていましたね。
心に迫る歌詞ですよね。メロディーは同じなのに歌うシチュエーションも全く違いますし、どちらがいいとか比べることはできないです。オリジナルにはない曲なので、まずこの曲を使うか悩まれたようです。最終的に演出のガブリエルさんが、このパーシーの持ち歌を石丸幹二さんだけではなく、私にも「歌ってみたら」と言ってくださいました。
──ワイルドホーンさんの作品には数多く出演されていますが、安蘭さんの声について彼から何か印象的なお言葉は?
「ソウルフルな声、魂の声」と言ってくださいました。そして「ベルト(地声)がいいからベルトで歌ってほしい」と。彼自身ベルトが好きなので地声で歌う曲が多いのですが、マルグリットの曲はとてもキーが高くレンジが広いので難しいですね。技術はもちろんスタミナが必要。それに豪華な衣装を着ているので、大変で・・・。
──衣装もそれぞれ世界観があり素敵でした。
1点1点こだわりのあるドレスです。最近の公演では衣装は1着、ということもあったので嬉しかったです! ウエディングドレスなど7~8着ありました。カーテンコールでの赤いドレスは、実は舞台稽古のとき急に決まって。パーシー役の石丸幹二さんも赤い衣装で私も赤で、素敵な計らいですよね。
──女優としてさまざまな作品で活躍されていますが、今の課題などは?
この作品についてはやはり、まず歌です。男役と女優とではキーが全然違うので、ここ(喉仏)の位置を女優の歌では上げないといけない。男役の歌を歌うと、すぐ下がるんですが、上に上げる訓練ばかりしていると低音が響きにくくなるんです。高いところも歌いたいけど自分のいい声はこのへんかな?など、まだ探している感じです。両方確実に歌えたら最強なのですが。役柄としては軽いタッチの作品もやりたいですね。重厚な作品が多いので、枠にはまらずいろいろ挑戦したい、という欲が自分のなかにあります。
取材・文・写真(人物)/小野寺亜紀、写真(舞台)/渡部俊介
(Lmaga.jp)
