ケイバ熱盛ブログ「福永祐一という人」(10月26日)
コントレイルによる偉業が成された菊花賞。大荒れ期待の馬券はあっさりハズれてしまいましたが、ゴールの瞬間、「三冠おめでとう!」と思わずテレビ画面に向かって祝福しました。
福永祐一43歳。天才・福永洋一の息子という、端から見ればエリートスペック。しかし実際のところ、二世として恵まれた環境ゆえに苦労し、回り道をしてきたジョッキーという印象です。
10年近く前、洋一さんの騎乗フォームを映像で確認したユーイチが「あの時代ではレベルが違う。そりゃ、トップ張れるわけやわ」と乗り方の違いを熱心に、そしてうれしそうに解説していたことがありました。
デビューした時から父と比較され、批判され、その都度悩み、時には怒り、もがき続けてきた-。偉大な父親の存在は、憧れであると同時にコンプレックス。そして一時でも怠けることが許されないという、くびきでもあったと思います。
ユーイチは常々、自分が凡人であることを公言しています。だから努力でどうにか差を埋めようとしました。海外行脚で騎乗技術を磨くのはもちろんのこと、岡部幸雄さんから競馬に取り組む姿勢、心身のバランスを取る方法を教わったと、かつてウチのインタビューで答えてくれています。それが福永家悲願のダービー制覇や三冠達成につながるまで、相当な時間がかかりました。でも、父が届かなかった頂きを見ることができました。
この先、さらにきらびやかな戦績を重ねたとしても、恐らく「天才・福永祐一」とは呼ばれないでしょう。そもそも当人にそれを目指しているフシはなく、逆に天才じゃないからこそたどり着いた境地に、誇りを持っているように感じます。
自身の境遇と向き合い、戦ってきた25年。今、競馬人生のハイライトを迎えて何を思うのか、機会があれば聞いてみたいところです。(長崎弘典)