【競輪】仙人のような雰囲気を醸し出す佐古雅俊 59歳でもA級上位で奮闘中

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 ボートレースほどではないが、競輪も選手寿命は長い。ただ、年齢が上になればなるほど、選手としてのランクは下がってしまう。現在、競輪で最年長は三ツ井勉(63)。2016年1月に最下級のA級3班(チャレンジステージ)に陥落して、今年はここまで26走で3連単車券に1回だけしか貢献できていないが、モーニング(9~12時)もミッドナイト(21~23時)も参戦するなど元気ハツラツ。どこまで現役を続けるのか、見守っていきたい。

 今回、紹介したいのは競輪で2番目の年長者・佐古雅俊(59)=広島・45期・A2。1980年4月にデビューし、2年後から特別競輪(現在のG1、G2)で活躍。優勝していないが、86年11月の競輪祭(小倉)、88年7月の全日本選抜(青森)で決勝2着。2002年ごろまでは特別競輪に顔を出していたが、その後はS級を維持できず、最近はA級にとどまっている。それでも、古くから競輪を観戦するファンからすれば「往年の名選手」だ。

 佐古は5月19~21日の奈良競輪(F2)に出場。このシリーズはガールズケイリンが当時に行われ、短期登録の外国人女子選手が参戦。そんな中、59歳の佐古は気を吐いた。初日11Rの予選は333メートルバンクで最終バック8番手とピンチだったが、そこから内を突いて上昇。直線で外を踏んで3着に入ったのだ。

 2日目11Rの準決はさらに素晴らしい動きを見せた。打鐘4角から最終2角まで5番手をキープ。バックで梶山裕次郎(福岡)に内を切り込まれたが、佐古はひるまずに中を踏み込む。梶山に踏み勝った佐古は内をスルスルと踏み上げ、4角では番手の黒木誠一(兵庫)に体当たり。結果は黒木が1着、アタックした佐古は3着で、2年9カ月ぶりに決勝へ進出した。

 レース後、佐古は「去年(2018年)だけで手術は3回。狭心症や骨折やな」と明かした。「競輪をたくさん楽しもうと思った。辞めずに競輪がしたいと復帰へ頑張った」と手術後もめげることなく練習に取り組んだ。「この年齢で若手と力勝負なんかできる訳がない。要領よく無駄なく走らないと、ついていけない」と59歳でもA級で奮闘できる理由を語った。

 佐古は練習仲間に厳しく指導することでも有名。「今は練習グループの連中が活躍するのが楽しみであり、自分の励みにもなっている。彼らを何らかの形にしたくて、しごいている。(現在A級3班の)阿部亮治はA級2班の競走得点が取れそうやし(同S級2班の)郡英治もS級を維持できそう」と仲間の活躍を自分のように喜んでいる。

 今回の奈良ではママチャリで管理区域内を走る佐古を何度も見かけた。その姿は仙人が優雅に自転車を漕いでいるような雰囲気。奈良で写真を撮ったとき「エエように撮ってや」と笑顔を振りまいた佐古。まだまだ現役を続けてほしい。競輪の最高齢記録は68歳(湯浅昭一=期前。1996年12月登録消除)。佐古はこの記録を必ず塗り替えるはず。2028年、59歳の記者が68歳で現役の佐古を取材しているだろう。(関西競輪、ボート担当・森田新吾)

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