【平成G1波乱プレーバック】平成19年NHKマイルC ピンクカメオ
「平成19年NHKマイルC ピンクカメオ」
大波乱の予兆はオーナーの“鶴の一声”だった。ダイワスカーレットとウオッカの対決に沸いた桜花賞で、ピンクカメオは14着。次走はオークストライアルを想定していた国枝師だったが、金子真人オーナーのオーダーは「NHKマイルCを使ってほしい」と希望。通常なら牝馬同士の路線を選択するところだが、何か意図するものがあったのか-。
「金子オーナーはクロフネ、キングカメハメハで勝っていたからね」と師は述懐する。縁起のいいレースなのは間違いないが、さすがに牡馬相手では厳しいだろう。18頭立ての17番人気という低評価も当然と言えば当然だった。さらに、国枝師は3場開催の新潟にも管理馬を出走させていたため、レース当日の東京競馬場には不在だったのだ。
ところが、雨が降りしきり、稍重の発表以上に馬場が悪化。当時は南関東・大井所属だった内田博の豪腕にしごかれ、ピンクカメオは馬群の大外からグイグイと伸びて1番人気のローレルゲレイロを差し切った。3着に最低人気のムラマサノヨートーが突っ込み、3連単は何と973万9870円という超ド級の配当となった。
このレースを新潟で見ていた師はうなるしかなかった。「内田博は直線までジッとしてて、最後だけドンピシャのタイミングで外に出した。馬場状態や展開が全てはまった。そして改めて金子オーナーという人はすごいと思ったね。やっぱり“持っているんだな”と」。“強運”という言葉を超越した、目に見えない神通力が波乱を呼び起こしたのだった。