日本で海外馬券発売へ 行く末に注目
またも中東から朗報が届いた。26日、ドバイターフでリアルスティールが、UAEダービーでラニが優勝。ドバイでの日本馬Vは、一昨年のジェンティルドンナ(シーマクラシック)、ジャスタウェイ(デューティフリー、現ターフ)以来2年ぶりの快挙だ。昨年末も香港Cをエイシンヒカリが、同マイルをモーリスが制覇。いまや、日本馬が海外で勝ち負けするのは珍しくない。
16年度から、JRAは海外競走の勝馬投票券を発売する。農林水産大臣が定めた海外の24レースがその対象候補で、当面は日本馬が出走するG1レースに限定される見通しだ。発売馬券の式別は、単勝、複勝、ワイド、馬単、馬連、3連単、3連複の7種類。前述したように、今は日本馬のレベルも上がっている。応援の意味も込めて、遠征した自国の馬から馬券を買うファンは少なくないだろう。
ただ、配当的な妙味などを考慮した結果、日本馬より、外国馬に食指が動くケースも考えられる。馬連や3連単の相手に外国馬を入れて買う場合も。その際、大事になるのは出走全馬の情報だろう。日本馬は一定の予備知識があるうえに、日本のメディアも積極的に報じるはずなので“ヒント”は得やすいが、情報の比較的少ない外国馬の分析には苦労することも考えられる。
それを含めて楽しむのが海外競馬の馬券、と言われればそれまでだが、今以上に外国馬の情報を得やすい環境の整備は必要なはずだ。既に農林水産省はファンからの意見を募っているが、吸い上げた声をどう反映するのか。スムーズなスタートを切るためにも、官庁だけでなく、レースの主催国側、馬券の発売元のJRA、国内外の競馬メディアなどが一体となって取り組むべきだと思う。
というのも、普段のトレセン関係者の取材で、海外競馬の馬券発売に対しては「ファンの選択肢が広がっていい」という好意的な意見が多い一方で、「ますます海外のレースに関心が集中し、国内の競馬の空洞化を招く恐れもある」などと、心配の声も聞くからだ。無論、不安視するのも日本競馬の未来を憂うからこそ。そういう声もあるなかでの“船出”だけに、何としても成功させてほしい。
個人的には、海外のレースの馬券を売ることで、各国の出走馬を研究したり、日本馬との能力比較や検討をする機会が増えれば、より競馬への興味が深く、幅広いものになるのでは、と感じている。馬券を片手に“参加”すれば、自然と熱も入るし、見方も変わってくるはずだ。新たな試みの行く末はどうなるのか-。今後も引き続き注視していきたい。(デイリースポーツ・大西修平)



