【凱旋門賞】ハープ歴史の扉開く

 「凱旋門賞・仏G1」(10月5日、ロンシャン)

 圧倒的に有利な立場を生かして世界の頂をつかむ。日本勢として初めて3歳牝馬の身で欧州最高峰の舞台に挑む、今年の桜花賞馬ハープスター(栗東・松田博)。キャリアの面では見劣っても、若き乙女は斤量面で絶大な恩恵を受ける。古馬の牡馬よりも5キロも軽い54・5キロを味方に、日本馬初Vの悲願達成を目指す。

 研ぎ澄まされた馬体に、3歳牝馬らしからぬ落ち着き払った姿。緑あふれるシャンティイの森をまるで楽しむかのように、ハープスターは29日、ラモルレイ調教場のダート周回コースを駆け抜けた。

 キャンターで1200メートルの調整を完了し、調教を担当する中留助手は「馬は非常に元気ですね」とうなずく。爪の不安から仕上げに苦労した前走の札幌記念(1着)当時とは一転、フランスの地ではすこぶる順調。27日に1週前追い切りを消化したあとも抜群の雰囲気を保っている。

 悲願へ、満を持して3歳牝馬を投入する。69年スピードシンボリ(着外)から始まった日本馬の凱旋門賞挑戦は、これまで2着が4回。惜敗を重ねるなかで“斤量”がクローズアップされ始めた。古馬の牡馬が59・5キロに対し、3歳牝馬は54・5キロで出走が可能。昨年、あのオルフェーヴル(2着)が、仏国の3歳牝馬トレヴに5馬身もちぎられたシーンはまだ記憶に新しい。

 松田博師は早くからこの“利点”に目をつけていた。「やはり斤量が軽いのは大きい」。09年には牝馬クラシック2冠を制したブエナビスタで挑戦プランもあった。「(前哨戦の)札幌記念(2着)で負けたというより、あの時は蟻洞(ぎどう=爪の病気)で行くことができなかった。凱旋門賞は3歳の時しか行くつもりはなかった」と当時を振り返る。

 トレーナーが熱望していた3歳牝馬による渡仏は、くしくも自身が手掛け93年の桜花賞とオークスを制した名牝ベガの孫。「ベガはおとなしい馬で海外でも走ったと思う。その孫で凱旋門賞に出走できるというのはうれしいな」。ベガ自身も3歳時に仏遠征(ヴェルメイユ賞)を計画しながら断念した経緯があり、今回の挑戦にはドラマを感じずにはいられない。

 日本馬の敗戦から得た教訓と、国内外でG1・20勝(地方を除く)の名伯楽による結晶。ハープスターがその輝きを世界へ発信する。

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