上司から休日深夜に「迎えに来て」→勤務時間外の私的なお願いってパワハラ?【ハラスメント専門家が解説】
3連休の最終日の22時ごろ、Aさんの夫のもとに職場の上司から電話がかかってきた。息子が救急で病院に来ているが、帰りのタクシー代がないため迎えに来てほしいとのことだった。
夫が病院へ向かうと、そこには上司だけでなく妹夫婦や両親もおり、バーベキュー後で全員が飲酒していたことから、夫がそれぞれの自宅まで送り届けることになった。その際「お礼はいいです」と伝えたため、金銭や品物などのお礼もない。
夫から話を聞いたAさんは「なぜ夫が全員を送らなければならないのか」と疑問を抱く。飲酒後の送迎を部下に頼むことにも「上司という立場を利用しているのでは」と、もやもやした不満が心に残った。
こうした依頼はパワーハラスメント(以下、パワハラ)ではないのだろうか。また、勤務時間外に上司から私的な頼みごとをされた場合、部下は断っても問題ないのだろうか。日本ハラスメントリスク管理協会の金井絵理さんに話を聞いた。
ー勤務時間外に上司が部下へ仕事とは関係のない送迎などを頼むことは、パワハラに当たりますか?
上司と部下という関係を背景に、私的な依頼をするのは、パワハラに当たる可能性が高いです。
厚生労働省はパワハラの6類型として「身体的な攻撃」「精神的な攻撃」「人間関係からの切り離し」「過大な要求」「過小な要求」「個の侵害」を挙げています。
今回の場合、仕事とは関係のない送迎を求めることは「過大な要求」、私的な事情で休日に呼び出すことは「個の侵害」に当たる可能性があります。また、こうした依頼によって精神的な負担を感じる場合、「精神的な攻撃」と判断されることもあります。
ー「お願い」の形であっても、部下が断りづらい状況なら問題になるのでしょうか?
表面上はお願いであっても、実質的には「命令」に近いことが多いです。
お願いや相談という形であっても、立場の違いを背景に部下が断れないのであれば、パワハラに当たる可能性があります。
ーパワハラだと判断する際には、どのようなことが重要になりますか?
その依頼が仕事や業務に関係しているかどうかです。
仕事に関係することであれば、上司から部下への「指示」として扱われるのが一般的です。一方、今回のように業務とは関係のない私的なお願いであれば、パワハラと捉えられる可能性が高くなります。
ー上司から私的な頼みごとをされた際、部下はどのように断るのがよいでしょうか。また、断ったことで仕事に影響が出た場合はどうすればよいでしょうか?
必ずしも本当の理由を伝える必要はありません。「その日は予定があって難しいです」「今、遠方にいて行けません」など、角が立たない言い方で断るとよいでしょう。
断ったことを理由に、仕事での不利益を受けた場合は、会社のハラスメント相談窓口に相談してください。社内での解決が難しい場合は、厚生労働省の「総合労働相談コーナー」など、公共の相談窓口を利用することもできます。
ー勤務時間外の「私的なお願い」と「パワハラ」の境界線について、知っておくべきポイントを教えてください。パワハラの定義として「優越的な関係を背景とした言動」「業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動」「労働者の就業環境が害されるもの」の3つが定められています。
勤務時間外の私的なお願いについては、業務との関係や要求の程度、精神的・肉体的な負担などを踏まえて判断することが大切です。
◆金井絵理(かない・えり) ハラスメント対策コンサルタント
一般社団法人日本ハラスメントリスク管理協会代表理事。企業や自治体などへあらゆるハラスメント対策の研修や講演等を提供する協会を運営。講師や相談員など専門家の養成もおこなう。
(よろず~ニュース特約ライター・夢書房)
