若い女性と中年男性の構図は何故、今も存在するのか、映画から考える ドキュメンタリー「美しく、黙りなさい」
「Me too 運動があまりにも早く潰されてしまった」
そう2026年のカンヌ国際映画祭の公開トークショーで語ったのはオスカー女優ケイト・ブランシェットだ。彼女は2018年のカンヌ国際映画祭で審査員を務め、映画業界で働く女性81人と共にレッドカーペットを歩いてMe tooを訴えた。そんな彼女が目にしている今のハリウッドは、スタッフの比率を見ても女性と男性の割合では圧倒的に男性が多いという。この状況を日本でも認識させるかのように、ある映画が50年の時を越えて公開された。それはドキュメンタリー映画「美しく、黙りなさい」という1975年から1976年にかけて撮影された作品で、監督を務めるのはフランソワ・トリュフォー監督の「夜霧の恋人たち」(日本公開1969年)などで知られる女優であり女性の権利を唱え続けた活動家のデルフィーヌ・セリッグだ。
興味深いのはパリとハリウッドで活躍する23人の女優に質問をし、その問いについて答えてもらうという極めてシンプルな構成なのに、まったく飽きることもなくむしろ彼女たちの気迫を感じて夢中になってしまう点だ。しかもカメラの前に現れるのは、2026年のカンヌ国際映画祭の開会式に東洋の女優コン・リーと手を繋いで登場し、シスターフッドを体現したジェーン・フォンダや、「エクソシスト」(日本公開1974年)のエレン・バースティン、他にも性的シーンが過激で話題となったベルナルド・ベルトリッチ監督の「ラストタンゴ・イン・パリ」(日本公開1973年)のマリア・シュナイダーなど様々な現場を体験した女優陣だ。そんな彼女たちが口を揃えて言うのが、映画の製作現場があまりに男性社会であることだった。
特にマリア・シュナイダーが口にした言葉は、つい最近、問題視された日本のドラマ「夫婦別姓刑事」にも当てはまる。「男と共演するにもせめて同年代がいい。ほぼ(相手の俳優は)40歳よ。(私は)23歳」。ちなみにもう一度言うが、このインタビューは50年前だ。何故、若い女性と中年男性の夫婦関係を今も描いたのだろうか。確かに製作発表のニュースを目にした際、違和感を覚えた。映画「美しく、黙りなさい」では、脚本家やプロデューサー、監督についても触れている。「多くが男性であり、男の理想の女性を演じさせられている」と。この組み合わせは男性陣の理想だったのだろうか。
果たして50年経った今、日本の製作現場は男女のバランスは取れているだろうか。この映画の原題は、「美しくしていなさい、そして黙っていなさい」というものだ。元はフランスの演劇、映画界で女性に対して使われていた言葉だという。ケイト・ブランシェットが嘆いたMe tooの衰退は、日本自体に目を向けると衰退どころかまだ進むことも出来ていないのではないか。そんなことを昨今、考えている。是非、その目で映画と現代を見比べて欲しい。
(映画コメンテイター・伊藤さとり)
