梅雨に映えるアジサイ“青とピンクの謎” 食べると危険!大葉と間違えやすい葉に注意
本格的な梅雨の季節になると、街角や公園を鮮やかに彩るのがアジサイ(紫陽花)だ。青、紫、ピンクと一株ごとに異なる表情を見せるその姿は、雨の多い時期の風物詩として親しまれている。しかし、この「色が変わる花」には、意外と知られていない科学的な仕組みと、注意しておきたい一面がある。
アジサイの花色は、単純に品種だけで決まるわけではない。実は土の性質が大きく関わっている。酸性の土壌では青色に、アルカリ性に近い土壌ではピンク色に寄りやすいと言われている。これは、土の中に含まれるアルミニウムが関係している。酸性環境では植物がアルミニウムを吸収しやすく、花の色素と結びつくことで青色が強く発現するとされる。逆にアルカリ性の土壌では、アルミニウムは水に溶けにくい形に変化して固定されるため、アジサイが花色の変化に利用できなくなる。同じ株でも土壌環境によって色が変わるという、珍しい性質を持っている。
さらに、神戸市立森林植物園の植物管理コーディネーター・田淵美也子氏は「近年の研究では、リン酸が色の変化に影響を与えることが指摘されています」と話す。リン酸は青色発色に必要な反応を抑える可能性があるとされ、単純な「酸性=青」という図式だけでは説明しきれない複雑な仕組みが明らかになってきているという。
青系かピンク系か、好みの色作りについて、田淵氏は「鉢植えであれば、専用の肥料などである程度はできると思います」と話すが、それでも「絶対」と言い切れないのが、アジサイの奥深い性質だ。地面に直接植えられている株であれば、なおさらコントロールするのは難しい。地続きの土壌でさまざまな成分が流入して吸収される可能性があり、日当たりも影響する。昨年青色だった株が、今年はピンクや紫に変わっていることも珍しくない。
神戸市立森林植物園では、「六甲ブルー」呼ばれるヒメアジサイを中心とした青系のアジサイが彩る「あじさい坂」が名所だが、一部にはピンクがかった花色も現れる。田淵氏は「アジサイは花色をコントロールするのがとても難しい花ですが、その変化やグラデーションの美しさも魅力のひとつ」と“今年だけの色合い”の楽しみ方をすすめる。
一方で、観賞植物として身近なアジサイには、注意すべき側面もある。葉や花を誤って口にすると体調を崩す可能性だ。
岐阜医療科学大薬学部の森博美教授は、実際に飲食店で料理に添えられたアジサイの葉を食べて吐き気・めまいなどの症状を訴えた2008年の事例を同大ホームページのコラムで紹介。「葉、根、つぼみが中毒に関与すると考えられていますが、毒性成分は未確定です。摂取量が多いと重症化するかもしれません。たとえ美味しそうな葉であったとしても食べたことがない食材を見た場合には、うかつに口に入れるのは避けましょう」と注意を促す。
飲食店にも、飾り付けでの使用について、「きれいで季節感があると思いますが、そもそも食べることを前提として添えた方がいいので、有毒植物は避けた方がいいと思います」と呼びかける。アジサイの葉は一見、シソの葉(大葉)にも似ているだけに、気をつけたい。厚労省もホームページ内で「刺身のツマのように、時々料理に添えられることがあるが、食用は避けるべきである」と記している。
雨に濡れた花びらが光を受けて輝くアジサイは、梅雨の季節を象徴する存在だ。その美しさの裏には、土中成分の化学反応が生み出す繊細な色の変化と、知っておくべき自然の性質が隠れている。見慣れた花であっても、いつもの散歩道で咲くアジサイを眺めるとき、その色が「偶然ではなく、土と植物の対話の結果」であることを思い出すと、風景はまた少し違って見えてくるかもしれない。
(よろず~ニュース・田中 靖)
