漫画家わたせせいぞう氏は今…15日で81歳、復刻版出版「不変の美を再認識」3月から手塚治虫記念館で展示
漫画家・わたせせいぞう氏の代表作「菜(さい)」の後日譚となる「菜~ふたたび~」の復刻版「菜~ふたたび~ Complete Edition」(玄光社、税別8千円)全2巻が1月末に刊行され、昨年から続いた同作の複刻シリーズが完結した。3月からは兵庫・宝塚市の手塚治虫記念館で「わたせせいぞうの世界展~手塚ワールドとの出会い~」を開催。15日に81歳の誕生日を迎える同氏は、傘寿を過ぎた今も精力的に活動を続けている。
わたせ氏といえば、1983~89年に「週刊モーニング」(講談社)に連載されたフルカラーコミック「ハートカクテル」で知られる。都会に生きる男女の心の機微を描き、80年代に一世を風靡(ふうび)した同作の連載終了から3年を経て新境地を開いた作品が「菜」だった。「K市」こと古都・鎌倉を舞台とする「菜」は同誌で92年から98年まで自身にとって最長の連載作品に。“その後”を描いた「菜~ふたたび~」も2007年から09年まで同誌で連載された。
「菜」の復刻版「菜 Complete Edition」全6巻(玄光社)は昨年6月と8月の2回に渡り、各3巻セット(税別4千円)で発売。今回の「菜~ふたたび~」復刻版はオリジナル全3巻を2巻に再構成し、作品だけでなく、ネームなど未公開資料や読み物も充実している。「耕平」と「菜」という夫婦が試練を乗り越えながら愛情に満ちた家庭を営んでいく物語に対し、タレントの渡辺満里奈は「かけがえのない美しい物語」とコメントを寄せた。
1巻には俳優・歌手で作家の中江有里との対談も収録。わたせ氏は同作について「向田邦子さんが書いた家族像がバックボーン」「『ハートカクテル』を俳句とすれば、『菜』は短歌」「自然の音がBGMになった作品」などと証言し、中江は「携帯電話が無かった時代を知っていると、懐かしさを感じるし、逆にそういうものが最初からある世代の人達は新鮮に感じるんじゃないでしょうか」と感想を述べている。また、2巻に掲載された人気イラストレーター・マツオヒロミ氏による寄稿イラストも注目される。
企画・編集を手がけたアンソロジスト(編集者)の濱田髙志氏は当サイトの取材に対して「著者の代表作『ハートカクテル』でも四季折々の色彩の変化が描かれていたが、本作ではそれがより深化し、風景や衣装、それに小道具までもが物語の一部となり、登場人物の心情を表している」と「解説。今回の出版には「移ろいやすい時代にあって“変わらないもの”の美徳を再認識するきっかけになれば」と期待を込めた。
わたせ氏は損害保険会社の営業マンを務めながら、週末に作品を描く“二足のわらじ”で74年に漫画家デビュー。2年前に「画業50年」を迎えた後も全国各地で作品展を開催している。
その流れとなる手塚治虫記念館での展示は3月6日から6月7日まで3カ月間の長期に渡る。自身は神戸市生まれで、宝塚市で育った手塚氏の地元にはゆかりがある。小学生時代から手塚ワールドに魅了され、15年に阪急電鉄の神戸線と宝塚線でそれぞれのキャラクターがデザインされたラッピング電車が走り、線路上で“共演”を果たした経緯もあった。また、関連企画として、わたせ氏の版画展(4月8~19日)、サイン会(同11日)が宝塚市立文化芸術センターで行われる。
(デイリースポーツ/よろず~ニュース・北村 泰介)
