大河『光る君へ』藤原兼家は次男・道兼を利用して捨てた“非情”の人か?悩み抜いた父の思い 識者語る

 NHK大河ドラマ「光る君へ」第14回は「星落ちてなお」。藤原兼家(段田安則)は、自らの後継者を嫡男の藤原道隆(井浦新)と定めます。それに不満だったのが、兼家の命令に従い、汚れ仕事をやってきた次男・藤原道兼(玉置玲央)でした。道兼が父・兼家に対し、怒りをぶちまける様が描かれていました。鎌倉時代初期に成立した説話集『古事談』には、兼家の後継指名に関する興味深い逸話が収録されています。それによると、兼家は、関白職をどの息子に譲るか、まず腹心に諮ったとされます。

 腹心の中には、道兼を推す者もいました。それが藤原有国でした。なぜ有国は道兼を推薦したのか。同書には、道兼が花山天皇の出家・退位について貢献したことが理由ではないかとしています。

 一方、平惟仲は道隆を推したとあります。平安時代後期の説話集『江談抄』にも同じ場面の記述がありますが、そこには臨終に際して兼家は藤原有国を側に召したと書かれています。子息の中で誰を後継者にするか尋ねるため、有国を呼んだのです。有国は道兼を推薦しますが、『古事談』のようにその理由については書かれていません。

 さて、兼家は平惟仲や多米国平にも同様のことを尋ねます。彼ら2人は、長幼の観点から、道兼(弟)ではなく、道隆(兄)を勧めたとのこと。兼家はこの2人の見解を尤もと感じたのでしょう。道隆を後継としたのでした。ちなみに、道兼を推薦した有国は、その事を知った道隆により恨まれ、官職を奪われたと『江談抄』にはあります。

 ドラマにおいては、兼家は子の道兼を利用するだけ利用して捨てる非情の人として描かれていますが、前掲両書の記述から考えれば、自分の後継としても良いと思案していた可能性もあります。『栄花物語』(平安時代の歴史物語)は道兼を「とても老巧していて、男らしい」と記していますので、これが真であるならば、兼家が道兼を後継候補と考えていたとしても不思議はないでしょう。

(歴史学者・濱田 浩一郎)

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