世界遺産「仁和寺」クラファンに約270万円集まる NFT導入など“攻め”の姿勢「一番はファンを作りたい」

 真言宗御室派の総本山・仁和寺(京都市右京区)は、名勝庭園メンテナンス費用を捻出することを目的としたクラウドファンディングを1月10~29日の日程で実施。目標金額200万円を突破し、約270万円(135%)が集まった。同寺院の財務部管財課・金崎義真課長にクラウドファンディングを実施した経緯、これからの展望を聞いた。

 仁和寺は888年(仁和4年)に創建された寺院。境内には五重塔や二王門など江戸時代に建立された建造物が並び、金堂前の染井吉野、鐘楼前のしだれ桜といった桜の名所としても有名。1994年(平成6年)には「古都京都の文化財」のひとつとして世界遺産に登録された。

 境内が約24万坪、建物総数は約150棟を有する同寺院の補修やメンテナンス費は、これまで参拝料と国・自治体による支援によって賄われてきた。しかし、コロナ禍により観光客・参拝者が減少。施設の維持や補修の計画に影響が生まれた。

 そこで選んだのが、クラウドファンディングという道。金崎氏は「(クラウドファンディングは)新しい仕組みというイメージですが、お寺は昔から『勧進』をやってきた歴史がある。そういう過去の実績やノウハウがお寺の中にはある」と説明。「『勧進』が『クラウドファンディング』という横文字になって根付いた現代では、現代に合った方法です」と経緯を明かした。

 事業費5300万円を想定する中で、目標金額は200万円に設定。金崎氏によれば、今回は「トライアル」の要素を含んでいるという。「一般の方にお寺が抱えるインフラ、資産を公表していないので『世界遺産にはお金が潤沢にある』というイメージを持たれてしまう」とし「(そのイメージがある中で)クラウドファンディングを行った場合、どういう反応があるのかはテストしないといけない」と語った。

 支援は5000円から150万円まで、計7コースを用意。1月10~29日の日程で約270万円(135%)が集まり、150万円コース(リターンは、宿坊「松林庵」の貸し切り)で支援する人もあった。返礼品にはNFTなどデジタル技術を導入。また、メタバースを活用した“攻めの観光”を実施するなど新しい形を探求している。「一番は(仁和寺の)ファンを作りたい。ネットを通して知ってもらいたい」と金崎氏。“攻め”の姿勢は未来への一手としての要素を多く含んでいる。

 支援金額を少しアップさせた2023年度版のクラウドファンディングも実施予定。今回の実施で寄せられた「1000円、2000円の支援なら…」などの意見も参考に、トライアルを続けていく。金崎氏は「若い世代に届け続ける。お寺は若い人のイメージがなかなか少ないですけど、その若い世代が年を重ねて30、40、50代になっていくので、その世代に届けるためですよね」と明かした。

 これまでの参拝料と国や自治体による支援による経営の課題が見えたコロナ禍。終息の兆しが見えてきたとしても“攻め”の取り組みを続けていく。

(よろず~ニュース・藤丸 紘生)

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