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渡辺宙明と菊池俊輔 特撮、アニソンの二大作曲家を昭和サブカルチャー研究家が語る

 数々のアニメソング、特撮ソングを手がけた作曲家・渡辺宙明さんが今年6月に96歳で死去し、さまざまな追悼番組、企画が実施された。声帯模写パフォーマーとしてアニソンなど多彩なステージを展開し、昭和サブカルチャー研究家として配信番組、「ヒデ夕樹とテレビまんが主題歌の黄金期」の著書も持つ剣持光さんは「ヒーローソングの礎を築いた人が、もう全員いなくなってしまったという印象ですね」と、同ジャンルの二大巨頭をともに形成し、21年4月に89歳で亡くなった菊池俊輔さんにも触れ、その逝去を惜しんだ。“二大巨頭”という渡辺宙明さんと菊池俊輔さんについて、剣持さんに話を聞いた。

 渡辺宙明さんは「マジンガーZ」「野球狂の詩」「人造人間キカイダー」「秘密戦隊ゴレンジャー」「宇宙刑事ギャバン」「スパイダーマン」などの主題歌、劇伴等を手がけた。一方の菊池俊輔さんは「タイガーマスク」「バビル2世」「仮面ライダー」「Dr.スランプ アラレちゃん」「ドラゴンボール」に加え、ドラマ「暴れん坊所軍」「赤いシリーズ」でも知られる。剣持さんは「主題歌に加えて、劇伴の作曲を手がけ、さらに編曲もご自身でやっていた方は非常に少ない。そういう意味でもお二人は別格というか双璧だったと言えます」と語った。「シ」と「ファ」を使わないヨナ抜き音階(マイナーペンタトニックの一種)による作曲法が共通する両者だが、作品の印象は正反対だという。「渡辺さんはクール、菊池さんはホットと言えます」と語った。

 「渡辺さんは欧米を意識し『鬼警部アイアンサイド』のクインシー・ジョーンズ、『燃えよドラゴン』のラロ・シフリンからの影響を受けました。ブラスロックが特徴的で、その中でも1970年代の『キカイダー』『マジンガーZ』『イナズマン』はその魅力がさく裂していると思います。70年代後半にはディスコサウンドを取り入れ、その傑作が『スパイダーマン』と『バトルフィーバーJ』ですね。77年の映画『サタデー・ナイト・フィーバー』がアメリカを象徴する曲となり、両作品がアメコミ絡みのため、アメリカの雰囲気を出そうともしたのでしょう。もう一つの特徴は、身近ではなかったサントラで子どもたちの心を高揚させたことでした。『宇宙刑事ギャバン』にレーザーブレードというテーマ曲がありますが、これが流れたら子どもたちが反応するという、パブロフの犬のような刷り込み現象を起こしていました。80年代になり、時代の最先端のサウンドを取り入れ出しましたが、この傑作も『宇宙刑事ギャバン』で、馬飼野康二さんを編曲に起用して、より若者らしくポップでロックな作品に仕上げられました。自分のスタイルを保ちながら、サウンドエフェクト、シンセサイザーなど、常に新しいものを取り入れたと思います」

 渡辺さんとは異なる魅力を、菊池メロディは持っていた。

 「アニメソングの仕事は『タイガーマスク』など菊池さんの方が渡辺さんより早く、ヨナ抜きを用いたヒーローソングのパイオニアです。それまでは、例えば『エイトマン』は歌謡曲の延長でしたし、他に童謡の類いの曲もありました。そんな状況で、ヨナ抜きを用いたカッコいい曲を編み出したんです。ブラスロックを軸に、ティンパニ、木琴などを用いた、煽るようなストリングスが特徴的でした。テンポが速いと高揚感を生み、スローだとしっとりとした哀しい曲になり、日本人好みの曲が多かった。だからヒーローソングだけでなく『暴れん坊将軍』『赤いシリーズ』『Gメン'75』など、さまざまな番組で採用されたのでしょう。個性が強すぎるため『暴れん坊将軍』と『宇宙からのメッセージ銀河大戦』のように、似た曲になることもありましたが、それだけ、我々の心の中にメロディが浸透し、70年代のヒーローソング、劇伴の礎を築いた、と言えると思います」

 劇伴に関しては、渡辺さんが60年代までの新東宝映画で活躍し、それ以降はアニメ、特撮ヒーローものを除く作品が少なかったのとは対照的といえる。

 「渡辺さんは著書で、あまりにも先端を行ったためにテレビ関係者に使ってもらえなかった、と自虐的に書いていますが、後から時代がついてきた、といえる部分はあります。再評価の部分が大きいのは渡辺さんの方です。『マジンガーZ』も放送当時は大ヒットとまではいきませんでしたが、90年代に水木一郎さんが『マジンガーZ』で再ブレークしたように、放送から時を経て受け入れられたのでしょう。堀江美都子さんが『キャンディ キャンディ』、ささきいさおさんが『宇宙戦艦ヤマト』でミリオンを記録しているのと対照的に、水木さんはミリオンヒットがありません。100万枚以上売れたのも菊池さんは『タイガーマスク』『仮面ライダー』がありますが、渡辺さんはありません」

 いずれにせよ、二人の偉大な作曲家が昭和、平成を彩った事実は変わらない。「間違いなく両名がいたからこそ、特に特撮ソングでは、劇伴がレコードになり、子どもたちにも浸透したと言えます。『タイガーマスク』が250万枚とされる売り上げがあった頃から、子どものたちがレコードを求める流れができました。二人が亡くなり、一つの文化の功績者が不在となったといえます」と総括した剣持さんに、宙明サウンド、菊池メロディーのイチオシの曲を聞いた。

 「菊池俊輔さんは『戦え! 電人ザボーガー』『ロボット刑事』の二つです。菊池メロディの全てが詰まっています。煽るようなテンポ、ブラスロック、ティンパニ、木琴…傑作です。渡辺宙明さんは『駆けろ!スパイダーマン』ですね。特撮ソングに初めてディスコサウンドを持ち込んだことに加え、今も色あせぬ魅力を放っているからです」

(よろず~ニュース・山本 鋼平)

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