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「スクールガール・コンプレックス」完結 写真家・青山裕企「僕にとってはドラクエ」 15年間の道程語る

 写真家の青山裕企さん(43)が最新作「SCHOOLGIRL COMPLEX A to Z」(青幻舎)を発表し、出世作であり代表作である「スクールガール・コンプレックス」シリーズに終止符を打った。思春期における女子学生へのコンプレックスを原動力に、妄想を作品に昇華させ続けた15年。「僕にとってはドラクエですね」と、国民的RPGゲームの名前を挙げ、自己と向き合い続けた道程を語った。

 女子学生の透けるシャツ、ソックス、チェックのスカートからのびる足、膝裏、ほくろ、かさぶた。当初は顔を写さないことで彼女たちの個性を徹底的に記号化させた。やがて女子学生同士の関係性に視線が向き、記号性から個性にも焦点を当てるようになった。ついには記号性の象徴だった「顔を写さない」ルールも取り払われた。2006年に始まり、07年にキヤノン写真新世紀優秀賞を受賞、10年に発表した写真集が大ヒット。集大成の最新作でシリーズ7冊目となった。

 「名前通りに学生時代のスクールガールに対する私のコンプレックスを作品にしてきました。女の子と話したい、付き合いたい、その先にも行きたいのに、目を合わすこともできませんでした。恐怖すら覚えた思春期、女の子を後ろからしか見られなかった自分自身のまなざしを写真にすることで、大人の自分が生計を立てているのは何の因果だろうかと思います。15年やってきて、学生時代のコンプレックスが少しずつ解消していく感じがあり、作品も変わっていきました。今回、区切りをつけることで、もう解消された、もうなくなったと思いたい。そう決めました」

 高校時代までのコンプレックスを創作の源にしてきた。ただし、漫然と湧き出るものではなかった。自己と向き合う道程が名作RPGドラゴンクエストのようだったという。

 「表現するにはネタがほしい。ネタは外から持ってくることもできますが、僕の場合は自分の内面を掘っていくしかない。心の中に洞窟があり、どんどん奥に進むような感覚でした。コンプレックスというのは魔物であり、いわばドラゴンです。大人になれば向き合う必要がない恥部を、心の洞窟から引っ張り出して、さらけ出して、対峙(たいじ)して、退治していきました。自分の気持ち悪いコンプレックスを表に出したら、案外かわいいねと、皆に愛されたようにも思います。ドラクエにもかわいい敵がいますし」

 具体的なドラクエのイメージは、1986年のシリーズ第1作。勇者がひとりで竜王を倒す。

 「倒すべき敵は思春期の女性に対するコンプレックスだと分かっているけれど、心のどこにそいつがいるか分からない。いろいろな方に助けてもらっているんですけど、写真の表現はチームプレーではないので、パーティー感はありません。第1作はアイテムや操作で融通がきかない不自由さがあり、その中でレベルが上がっていく感じが似ているように思います。この15年間は総じてうれしく、楽しかったですね。現在進行形の悩みではないので、大人の自分が、黒歴史である思春期の自分を助けに行くような感覚でした。本当は当時から女の子と話せたり付き合えたら良かったのですが、あの頃の自分があるから写真が撮れる、そんな感覚で冒険していました」

 写真家として、経済的にも精神的にも進退をかけた同作は高く評価され、仕事が軌道に乗った。ドラクエにも変化が生じてきた。

 「最初は呪文を使えないし不自由で、目の前の敵を倒すだけ、移動手段も歩くだけです。誰も分かってくれない感じがあった写真を評価してもらい、特に『この写真いいですね』『好きです』『分かります』と、女性に受け入れてもらったのが、一番大きかった。ドラクエ第1作ではありませんが、船に乗り世界が広がった感覚もありました。一方で、最強の武器や呪文を使えるようになった時のように、冒険に物足りなさを感じる時期もあったので、より強い敵を求めて、心の洞窟をさらに奥へと進んでいきました。今はラスボスの竜王を倒して、エンディングに浸っているような気持ちです。レベルでいえば99というよりも50くらいで、まだレベルは上げられると思うのですが、やり切ったという達成感はあります。もしかしたら裏ボスがいるかもしれないので、ひょっこり冒険が再開する可能性もゼロではないですけどね」

 青山さんは記号的なサラリーマンをジャンプさせることで個性を見いだす「ソラリーマン」シリーズ、ひとりの少女を謎の関係性で追い続ける「少女礼讃」シリーズを手がける。並行して生駒里奈や吉高由里子ら数多くのアイドルや女優の撮影を行っているが、学生時代のコンプレックスを投影させてきたという。それを解消させてしまうことは、創作活動に影響を及ぼさないはずがない。

 「15年間なるべくコンプレックスをなくさないように、女の子を撮ってきました。しかし、もうなくなったと決めたことで、何年かかるか分かりませんが、新しい表現が出てくると思っています。何も出てこなくて終わってしまうかもしれませんが、しばらく休止していた『ソラリーマン』を最近再開したように、からっぽにすることで自分の中で湧き出てくるものがあると信じています」

 大切な“武器”を手放す決断にも悲壮感や焦りは感じられなかった。筑波大学在学中の1998年、自転車で日本縦断した道中の北海道で写真を始め、2001年に世界二周した旅の道中、グアテマラで、写真家になる決意をした青山さん。志を立てて以来、一貫する信念があるからだ。ドラクエの勇者になぞらえて語った。

 「24歳の時に写真家になろうと決めてから、根拠のない自信がずっとあります。ずっと写真で生きていけると思っています。今回の集大成を迎えても、それは変わりませんでした。次に何が出てくるのかは全く分かりませんが、不安はありません。これまでの自分史では、からっぽから何か新しい表現が出てきていたので、期待しています。それは勇者のようだと思っています。レベル1の勇者の強さは凡人と変わりません。ただ勇気を持っているだけなのに、いつの日かラスボスを倒せる、世界を救えると考えているわけじゃないですか」

 根拠のない自信とは、つまり勇気なのだろうか。コンプレックスを克服した先に、青山さんが生み出す新しい作品を、楽しみに待ちたい。

(よろず~ニュース・山本 鋼平)

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