無数の「いいね」から得る「自己肯定感」上映3作品から見える辛口な若者の映画が伝えたいもの

 偶然か必然か?社会に痛烈な言葉を突きつける若き主人公達の映画が2021年10月に3作品も上映されています。

 まずは『アメイジング・スパイダーマン』のアンドリュー・ガーフィールド主演、フランシス・フォード・コッポラの孫ジア・コッポラ監督による人気YouTuberのカリスマ性に潜む野心と虚言を描くアメリカ映画『メインストリーム』(公開中)。本作は、破天荒で話術にたけた男性リンクと出会った20歳の女性が、作家志望の友人と共にリンクのYouTubeチャンネルを立ち上げ、スターダムへとのし上がっていく物語であり、リンクの社会や人々に向けられた辛口なコメントが膨大な「いいね」を生み、やがて炎上へと変化した時に見えてくる人間の真の狂気を描いていきます。

 同じようにSNSの狂気と若者たちの心の叫びを描いた日本映画『プリテンダーズ』(公開中)は、2021年後期のNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」の出演が決定している小野花梨が映画初主演、NHKで今年放送となったドラマ「きれいのくに」出演で注目された見上愛が主人公の親友を務めた熊坂出監督のオリジナル脚本によるもの。本作では、社会に批判的なひねくれ者で引きこもりの花梨が親友を誘い、現実にフィクションを織り交ぜ、偽善について社会に物を申す動画製作をすることでSNSの闇に飲まれた結果、痛みの中で自己開示していく姿を映し出していきます。

 そして22日に公開されたイギリス映画『ビルド・ア・ガール』は、話題作『ブックスマート 卒業前後のパーティーデビュー』のビーニー・フェルドスタインを主演に迎え、音楽評論家でもあるキャトリン・モランの半自伝的小説を映画化したもの。それは何者かになりたい16歳のジョアンナが音楽情報誌に売り込み、若くして辛口音楽ライターとして人気を博し、やがて愛する人をも傷つけてしまう自身のおごりに気づく物語です。

 この3作品の共通点は、現代社会が抱える発達心理において経験する「承認欲求」がねじれた行動に出たものであり、批判(非難)することが真の“正義”であると考え、その結果、無数の「いいね」から「自己肯定感」を得るというものでした。

 この映画の主人公たちは親が忙しく褒めてもらえずに思春期を過ごし、情報を発信する場に居場所を見出した結果、多くの人が炎上や好感度を気にして口にしない他者への「批判」を辛口で表現することで、周囲の目を気にしない堂々たる物言いでカリスマになっていきます。しかし他者を巻き込んだ上での痛烈な批判の代償は大きく、人間関係が崩壊した際にどう立ち直っていくのかをそれぞれの映画が独自の視点で提示しています。

 確かに今やSNS社会となって一億総批評家気取りが出来る状況で、「非難」を「批評」だと勘違いしてしまう人々の言動が問題視されています。実際、辛口なコメントは人目を引きますが、その言葉のナイフで刺された人々の心は深い傷を追い、時には世界から去ってしまう人も存在します。そんな中、親として思うのはもっと子供を褒める人間にならねばと考えさせられるのです。 特に日本人は褒めるのが下手であり、長きに渡り謙虚であることや我慢することを美徳とする文化が成立していました。けれど情報があふれ、ひとり一台スマートフォンを持つ現代では、家庭での会話は減少し、親から褒められずとも他者からの高評価をSNSで得られることからSNS依存が生まれている状況です。

 本来は人と人との対面での「褒められた経験」やぬくもりから愛情を感じ、自分は大丈夫だという安心感を得ることで「自己肯定感」は高まり、他者にも寛容な人間に育っていきます。だからこそ大人達が「褒める」社会作りを意識することで他者への攻撃は減少し、多くの人が自分への幸福度を上げる結果を生む気がしてならないのですが…。

(映画コメンテイター・伊藤さとり)

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