アニメなどの「放送禁止用語」対応に“AI的視線” 再放送で実感するNGワード 人気芸人が解説

 時代の移り変わりによって、かつて日常会話で使われていた言葉がNGワードになったことが、テレビアニメやドラマなどの再放送で実感させられる。ゴジラなど特撮キャラクターのソフビ人形など幅広いジャンルのコレクターで知られるタレント・なべやかんは当サイトの取材に対し、実例を挙げながら自身の見解を語った。

 放送当初は問題視されなかった言葉が後に放送禁止用語になると、その音声は消されることになる。例えば、アニメ「巨人の星」で、主人公の星飛雄馬による「僕の父は日本一の日雇い…です」というセリフは肉体労働者を表す言葉がネックとなって再放送でカットされた。なべは「それ(肉体労働者を表す言葉)でいうと『あしたのジョー』でも子どもたちが丹下段平を別の表現で呼ぶシーンがあります。人間関係ができていて、親しみこそあれ、悪意は全くないんですけど、文脈には関係なく、AI的に言葉尻をとらえてNGとして音声が消される」と指摘した。

 さらに、なべは「(漫画、アニメの)『釣りキチ三平』だって尊敬の気持ちを込めた『キチ』だけど、アウトと言われた時期があった。ちなみに、実際のニュースで『なぜダメなのか』という問いに、『キチという発音を聞いて反応しちゃう人がいるから』と答えていた人がいましたが、それだったら『横田基地』とか『吉祥寺』も聞いただけで反応しちゃうな…と思いましたよ」と皮肉な現象を挙げた。

 タイトルにNGワードがあった場合は題名も変更された。なべは「CS放送で見ていたアニメのタイトルが『白雪姫と7人のドワーフたち』になって、今は『白雪姫』だけになっている。また、いつのまにか『み○しご…』じゃなく、『みつばちハッチ』になっていたり」と指摘。「僕は学生時代にラグビーをやっていて、相手を見ないで投げるパスのことを日本語で『…パス』と呼ばれていましたが、『ブラインド・パス』になった。『ドワーフ』もそうですけど、英語にしただけで、訳したら同じことですからね」と付け加えた。

 「ドワーフ」といえば、日本でも実際に映画やテレビドラマで体格の特徴を生かした俳優が活躍した歴史がある。なべは「僕が『ゴジラ総選挙』って番組に出た時にミニラの映像が出てきて、他の出演者が『かわいい!子どもが入ってたのかな?」と言うから、僕が『小人のマーチャンという芸名の役者さんが入っていました』と説明したら、放送ではバッサリ切られていました。でも、映画ではキャストの字幕にちゃんと、その名前が出てきます』と語る。

 ミニラのスーツアクターは、俳優の深沢政雄さん。1967年に東宝の「怪獣島の決闘 ゴジラの息子」を皮切りに、同シリーズでは3年連続の計3作でミニラ役を務めたが、配役としてスクリーンに映し出されたクレジットは「小人のマーチャン」だった。芸名まで伏せ字にすることはできない。ただ、その名はテレビ番組等では語られなくなった。

 「ミゼットプロレスの角掛留蔵さんらが『俺たち、そのままの姿で出たらテレビで放送されないけど、ぬいぐるみ着たら大丈夫なんだよ』と言っていて、そっちの方がひどい差別じゃないかと思いましたね。芸があってしっかり笑いをとり、間(ま)がよくても出られない。その点、ハリウッドはいっぱい仕事がある。『ウィロー』とか小人の映画ですし、『スターウォーズ』でもキャラクターの中に入った人がたくさん出てくる。日本は仕事がないから、そういう体格の役者さんが少なくて、(ビート)たけしさんが監督する映画で使いたいって時に『どこにいるんだ』って真剣に悩んでましたよ」

 また、性的マイノリティに対する表現もそうだ。「昔のドラマを見ると、ゲイの人に対するいじりが多いじゃないですか。それが再放送された時にどうなるか。バラエティー番組でも騒動になった件がありました。『人間は地球上の生物として子孫を繁栄させることが目的だから、(性的少数者は)必要じゃない』なんてことを政治家が言ったら大変なことになる時代ですからね」

 人権に配慮し、差別を助長しない姿勢として評価される一方、映像表現等において、その背景や行間を読み取ることなく、AI的な視線でNGとなる点が、作品を愛するマニア的には残念なことでもある。「あれを言っちゃいけない、これも言っちゃいけない、あだ名も言っちゃいけない…。それで、アナログ的なイマジネーションというか、想像力がなくなっていき、言葉もデジタル化していくんじゃないか」。なべは、そう問いかけた。

(デイリースポーツ/よろず~ニュース・北村 泰介)

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