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柿澤勇人 ジャンルの垣根飛び越える「『ミュージカル界の…』と言われるのが嫌」

さらなる飛躍を目指す柿澤勇人
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 俳優・柿澤勇人(33)がどん欲に活躍の場を広げている。ミュージカル出身の実力派は、来年1月に舞台「スルース~探偵~」(1月8日~24日、東京・新国立劇場小劇場、地方公演あり)に出演。吉田鋼太郎(61)との二人芝居で、濃密な復讐劇を演じる。11月まで放送されたNHK連続テレビ小説「エール」では、国民栄誉賞歌手・藤山一郎さんがモデルの役で見事な歌唱を披露。ミュージカルから映像作品まで、ジャンルを問わずにさらなる飛躍を期す思いに迫った。

   ◇  ◇

 穏やかさの中に時折、メラメラと熱さが顔をのぞかせる。共演舞台「スルース」の発表コメントで、柿澤は事務所の大先輩である吉田に何度も「狂犬」と称された。「僕はチワワのつもりです」と苦笑しながら「うれしいですね」と喜んだ。

 コロナ禍で2本の主演ミュージカルが中止に。思うようにならない期間を過ごし、あらためて演じることへの思いは強くなった。たぎった情熱をぶつけるのに、二人芝居はうってつけの舞台。「舞台自体やめるのかみたいな不安もありましたし、ゴーサインが出た時は素直にうれしかった」と、表情には喜びと充実感があふれた。演じるのは、推理作家(吉田)の妻の不倫相手。高度な心理戦が展開される復讐劇の難役に「鋼太郎さんにしがみついてやるしかない」と言いつつ、楽しげだ。

 劇団四季出身。09年の退団後も数々のミュージカルで主演を務め、舞台はもちろん、ドラマや映画にも出演を重ねてきた。それでも「もっともっと売れなきゃいけないなと思うし、じゃないと生き残っていけないという危機感みたいなものはある。歌とか踊りとか、そういう技術みたいなものを捨てても戦っていけるようにならないと」と明かす。

 吉田、藤原竜也との共演ドラマを撮影していた昨年。居酒屋で2人に写真をお願いする客から、自身はカメラを渡された。「『おにいちゃん、カメラ撮って』って。まだまだなんだなっていう思いもありますし、チクショーっていう思いで来ているので」と苦笑いで振り返った。尊敬し、慕ってやまない吉田には胸中を打ち明けている。“狂犬”の表現は「僕の思いをわかってくれているからなのかな」と受け止めた。

 そんな中で出演したのが、朝ドラ「エール」だった。国民的歌手・藤山一郎さんをモデルにした山藤太郎を演じた。映像や音源を元に、自身とは全く異なる藤山さんの歌唱法を徹底的に研究。「すごい技術をお持ちなのに、それを一切見せない。余計なものは一切そぎ落とした歌い方」を追究した「長崎の鐘」などの歌唱シーンは、視聴者の反響も大きかった。何より「藤山さんの娘さんにお会いしたんですけど『よく研究されましたね。本当に父の若い頃にそっくり』って言ってくださったのが、一番うれしかった」とほおをゆるめた。

 影響力のある朝ドラで伝説の歌手を演じて、気付いたこともある。「音楽の力、歌の力ってすごいんだなあって。正直『ミュージカルやってるから歌ってよ』みたいなのって、あまり好きではなかったんですけど、いざやってみて反響を耳にしたりすると、『エール』に出たことで、ああ、もっとやっていいんだなって思ったし、もっと知ってもらってミュージカルとか演劇、舞台がもっと認知されて盛り上がればいいなって思いました」。歌の力を再確認したことは、今後に向けた大きな財産だった。

 ミュージカル、ストレートプレイ、映画やドラマの映像作品。どのジャンルでも、俳優は俳優だ。「僕は日本におけるミュージカルっていうのは、正直まだまだマイナーだと思っているし、もっともっと認知されなきゃいけないなと思っていて。壁をどんどん壊して広げていかなきゃいけない」と願い、ジャンルを超えて活躍する役者が増えてきた現状を「すごいうれしいです。『ミュージカル界の何とか』とか言われるのが僕は嫌。垣根みたいなものをどんどん取っ払っていかないと」と歓迎する。

 コロナ禍の外出自粛期間明けからは、努めてアクティブになったという。水泳に通い始め、ダンスレッスンをこなし、映画館にも足を運んだ。「こもっていたらおかしくなりそうだったので。水泳はすごく全身を使うし、呼吸も整うというか。痩せるし」と笑みを浮かべる。元々、幼少期からサッカーに打ち込み、高校も強豪校に進んだスポーツマン。「もうフットサルもやってないし、けいこ場とかでアップでちょっとボール蹴ったりするんですけど、もう何にもできないですね。10分ぐらいで肺がぶっ壊れます。(今の趣味は)お酒か水泳」と、ちゃめっ気たっぷりに明かした。

 順調にキャリアを積みながら、まだまだ危機感を抱く中で目指す俳優像とは。「どこのどういった環境、状況でも戦えるようにしたい。本当に理想ですけど、格闘技に例えたら全部強い人っていないじゃないですか。たとえばボクシングと、総合と、柔道と、キックボクシングと、全部チャンピオンって。求められていることをビビッドに感じて反応できたら楽しいだろうし、非常に難しいんですけど、何かこれっていうふうには決めないで戦って、生き残っていきたいな」。

 ジャンルをひょいと跳び越え、垣根を取り払ってしまえる役者に-どこまでもどん欲に理想を追い求めていく。

 ◆柿澤勇人(かきざわ・はやと)1987年10月12日生まれ。神奈川県出身。07年に劇団四季に入団し、同年「ジーザス・クライスト=スーパースター」でデビュー。「春のめざめ」などに主演し、09年に同劇団を退団。11年からホリプロ所属。同年「カイジ2」で映画初出演。主な出演作に舞台「スリル・ミー」、「デスノートTHE MUSICAL」、「フランケンシュタイン」、「海辺のカフカ」、「アテネのタイモン」、映画「猫は抱くもの」、ドラマでは「エール」、「未満警察 ミッドナイト・ランナー」など。身長175センチ。

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