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【大橋未歩】命が最優先された五輪開催1年延期に心から安堵

 「大橋未歩のたまたまオリパラ!」

  テレビ東京に内定した時、有難いことにもう1社内定をいただいていた。幼少期から馴染みのある番組をいくつも放送する地元関西の人気局だった。迷う背中をおしてくれたのは、あるアナウンサーの言葉だった。「オリンピックに行きたいならキー局に入社した方がいいよ」

 五輪は中学2年から描き続けてきた約10年ごしの夢だった。バルセロナ五輪、自分と同い年の14歳で金メダルを獲得した競泳・岩崎恭子選手に「今まで生きてきた中で一番幸せ」と言わせた舞台に憧れた。人生が決まった瞬間だった。

 テレビ東京に入社し、幸運なことに入社3年目でアテネ五輪キャスターとして現地に派遣された。肌で感じた憧れの場所は、一言で言えば『地球の運動会』。金メダルが生まれる度に地球が騒ぐ。身体中の血液が逆流するような興奮に酔いしれた。一方で、連覇が期待された日本選手団主将の柔道・井上康生選手が初戦で敗退。あまりの失意に歩くのもままならず両脇をコーチ陣に抱えられ引きずられるように控え室に戻る姿に、持っていたマイクを思わず引っ込めた。

 天国と地獄が共存するまさに人生の縮図。透けて見える人生を少しでも長いスパンで追いかけたい!そう思った私は、アテネから帰国した翌日にスポーツ局の上司の元へ直談判に行った。「4年間がむしゃらに頑張りますから4年後の北京五輪も行かせてください!」

 その後五輪2大会を取材し、脳梗塞の経験からパラリンピックへの想いを強くし、東京2020ではパラリンピック関連の仕事が決まっていた。でも、無上の価値である命が現状最優先された開催1年延期という決断に心から安堵している。つかみかけた代表の切符を、金メダルを、もしかしたら逃す選手もいるかもしれない。私も件の仕事はなくなるかもしれない。でも過去の五輪取材から改めて思う。努力は報われるとは限らない。時に理不尽で残酷なのが人生だ。だが、命ある限り前を向くことはできる。そんな姿をきっと誰かが見ている。

 ◆大橋未歩(おおはし・みほ)1978年8月15日、神戸市出身。フリーアナウンサー。2002年入社のテレビ東京時代にアテネ、北京、ロンドン五輪を取材。18年にパラ卓球アンバサダー就任。19年から「東京2020パラリンピックの成功とバリアフリー推進に向けた懇談会」メンバー、パラ応援大使でも活躍。

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