さだまさし 季節を歌う理由「この国で生まれ育ったこと」体感を伝えたい 未来に咲く花を今は育てている

 シンガー・ソングライターのさだまさし(73)の、7日に終了した「さだまさしコンサートツアー2025 生命の樹~Tree of Life~」から、11月22日の東京国際フォーラム公演がWOWOWライブで放送、配信される(今月28日、後9・45。来年1月15日、後7・00。終了後にWOWOWオンデマンドで1カ月アーカイブ配信)。さだがこのほど、デイリースポーツのインタビューに応じ、「季節を旅する」をテーマにしたコンサートの見どころや、73歳を迎えての展望を語った。

 「季節を旅する」というテーマは、さだが1973年にデビューした時のユニット「グレープ」を「あっちこっちで聴かせてあげようよ」という発想から浮かび上がった。吉田政美とのコンビであるグレープは76年の解散後も何度か復活し、4月にもツアーを行ったが、追加公演を含めて4カ所とあって涙をのんだファンも多かったのだ。

 グレープはデビューシングルが「雪の朝」で代表曲が「精霊流し」など季節の歌が多く、さだがソロになってからも、今ツアーのセットリストに入った「つゆのあとさき」や、山口百恵さんに提供した「秋桜」など、その傾向は変わらない。

 季節を歌う理由を、さだは「一つはこの国で生まれ育ったっていうこと。大きな出来事は必ず季節の思い出がくっついていますよね。歌いたいテーマをその季節にはめ込んでいくと温度感まで伝わる。空気感と色合いが出しやすい。1曲の歌の中で何を伝えていくのかっていうと、体感だと思う」と説明する。

 セットリストは「ちょっと通好みにしようかっていうんで、『つゆのあとさき』だとか『晩鐘』だとか『桐の花』だとか渋めのものをいい季節に配置して、グレープの春の歌は『初恋駅』と『縁切寺』。アンコールまでの最後の3曲はこのアルバム(5月に発売した『生命の樹~Tree of Life~』)から」といった選曲に着地。「案山子」や「北の国から」といった代表曲も入り、グレープも3カ所で登場と、名物のロングトークも含めてさだの魅力が存分に発揮されたツアーとなった。

 さだは73歳になった今年を「年を取ったぞっていう心の整理ができた年」だと振り返った。好きなゴルフを例に「若い人と同じようには動けないけど、若い時からずっとやってきた経験値があるから、どうにか心の中で処理できるっていう自信が湧いてきたところはありますよね」といい、「おじさんってこういう強みがあるんだよみたいなのが出せるっていうことは、音楽でもできる」と手応えを強めている。

 今ツアーは42公演あり、インタビューの時点でソロ公演は通算4720回を超えていた。さだは「4720回人の前に立ってお金もらって歌うっていう怖さを毎日経験してきた人間の経験値ってかなり強い。だからステージ上で何が起きてもどうにかなる。予定通り行かなくていい、伝えたいことをちゃんと伝えることが大事なんで」という境地に達している。

 幅広い年齢層から支持されてきたさだだが、今ツアーが始まった時から「40代男性のファンクラブ加入が増えている」という。さだは「こういう歌があるって支えにしてくれる子たちが増えたのかな」と推察し、「10年後か20年後に咲く花を今は育てている。そろそろ歌の言葉が聞きたいなっていうころに対応できるようなものを、今作っておいてあげようと思ってね」と話した。

 既に来年のグレープのツアーが発表され、ソロでも「来年もツアーをやろうと思っています」と笑う。「歌ってないテーマいっぱいあるんで、これ間に合うのかなっていう焦りがちょっと出てきましたね。全部歌いきれるのかな。いっぱい歌いたいことあるのに歌いきれないぞ」。

 3歳でバイオリンを始めてから70年-さだまさしの音楽の泉は、涸れることを知らない。

 ◇さだまさし 1952年4月10日生まれ、長崎市出身。3歳からバイオリンを学ぶ。72年、吉田政美とグレープ結成。73年デビュー。74年、「精霊流し」が大ヒット。76年、解散。ソロ活動開始。79年、「関白宣言」が大ヒット。日本初の12インチシングル「親父の一番長い日」発表。NHK紅白歌合戦初出場。81年、ドラマ「北の国から」の音楽を担当。監督・主演映画「長江」公開。83年、結婚。01年、初の長編書き下ろし小説「精霊流し」発表。21年、NHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」出演。

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