【ヤマヒロのぴかッと金曜日】どうする、どうなる特区民泊!「もう、むちゃくちゃですわー」

 「なんの前触れもなく店に来て、何言うかと思ったら『半年以内に店閉めて出て行ってくれ』って。もうむちゃくちゃですわ…」

 久しぶりになじみの小料理屋に立ち寄ったら、店の御主人がこう言って肩を落とした。若い頃から大阪の名店などで修業を積み、二十数年前に大阪市北区で今の店を持った。気軽に楽しんでもらえる営業スタイルで常連も多く、そのうち当コラムでも紹介したいと考えていたが、今回ばかりは名前を出すと迷惑がかかるので差し控える。9月初めに店に来た人物は不動産管理会社の人間だった。

 店主の知らないうちに入居するビルが中央区にある不動産会社に売り渡され、新しいオーナーから退去を迫られたというのだ。長年、営業を続けている店子(たなこ)に対して、いくらなんでも勝手すぎる。調べてみたら、不動産会社経営者は中国人だった。

 連日の報道でご存じの方も多いと思うが、特区民泊の利用者による騒音やゴミ捨てが大きな社会問題となり、行政には苦情が殺到している。これまで推進してきた大阪市は、一転して新規申請の受け付けを停止する措置に踏み切るなど対策に乗り出すことを明言したが、全国の9割を超す民泊が大阪市に集中している。大阪・関西万博や、2030年に開業を目指すカジノを含む統合型リゾートの需要を当て込んでのことだろう。今や住宅街の中に入り込み、中にはビルごと特区民泊として運用する物件も見られる。

 特区民泊の4割は中国人または中国系法人による運営とのことで、外国人経営者向けの在留資格「経営管理ビザ」を取得して来日する中国人が運営法人を設立するケースが多いそうだ。実際は海外在住のままペーパーカンパニーで立ち上げることができるため、苦情を入れても対応してもらえないことが多い。

 政府の観光立国推進基本計画によると、30年の訪日外国人の目標は6000万人。昨年が約3700万人だから、5年後にはさらに1・5倍に増える計算だ。国慶節の大型連休で、今週も中国から多くの旅行客が大阪にやってきている。「外国人旅行者に金を使わせ、経済を回そう」との安易な考えを改める気はないのだろうか。

 特区民泊制度の導入を決めた当時の橋下徹元大阪市長も、先日、TV番組でご一緒した際「(導入したことを)反省している。見直しが必要だ」と話した。一部の不心得者のせいで、すべての中国人旅行客が同様の目で見られるのは気の毒だ。中国人事業者の中にもちゃんと運営している人もいるだろう。あるいは、ルールやマナーを守らない日本人も含まれているかもしれない。

 いずれにせよ、現に市民の生活が脅かされている現状を大阪市や大阪府はどのように打開するつもりなのか。「これから先は止める」では解決にならない。問題のある既存の特区民泊に早くメスを入れてほしい。

 小料理屋の店主は、降りかかった災難を打開すべく弁護士をたて不動産屋との交渉を始めたそうだが、見通しは立っていない。これまで真面目に仕事しておいしい料理を食べさせてくれたあの店が無くなるのを黙って見てはいられない。(元関西テレビアナウンサー)

 ◇山本浩之(やまもと・ひろゆき)1962年3月16日生まれ。大阪府出身。龍谷大学法学部卒業後、関西テレビにアナウンサーとして入社。スポーツ、情報、報道番組など幅広く活躍するが、2013年に退社。その後はフリーとなり、24年4月からMBSラジオで「ヤマヒロのぴかッとモーニング」(月~金曜日・8~10時)などを担当する。趣味は家庭菜園、ギターなど。

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