はっぴいえんどギタリスト・鈴木茂 「バンド・ワゴン」記念盤リリースで明かした歴史的名盤の秘話 聴き継がれる理由

 音楽への思いを語った鈴木茂(撮影・持木克友)
 音楽への思いを語る鈴木茂(撮影・持木克友)
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 日本のロックに多大な影響をおよぼした伝説のバンド「はっぴいえんど」のギタリスト、鈴木茂(73)のソロデビューアルバム「バンド・ワゴン」(75年)が今年、発売50周年を迎え、記念盤「BAND WAGON-50th Anniversary-2025」がリリースされた。世代や国境を越えて長く愛される歴史的な名盤について、鈴木が制作の思い出と50周年盤の聴きどころを語った。

 鈴木は「バンド・ワゴン」が聴き継がれる理由を「常に若いリスナーを取り込めるタイプの音楽」「特定の時代で縛られるタイプの音楽ではない」「シンプルで、ロックということ」と感じている。普遍性を生んだのは「時代とかセールスに縛られずに、思いつくメロディーや曲をまとめる」という、鈴木の音楽の作り方だろう。

 はっぴいえんど、キャラメル・ママ(ティン・パン・アレー)とバンドで活動する中で「ソロアルバムを作りたい」との気持ちが高まっていく。「74年にはやっていた16ビートと、高校生の頃に好きだったロックの世界観とをミックスしたアルバムを作りたい。会ったことも(一緒に)演奏したこともない、ロック以外にやらないような人たちとやってみたい」という強い思いを抱え、74年秋に単身渡米した。

 はっぴいえんどのロサンゼルス録音をサポートしたリトル・フィートのローウェル・ジョージとビル・ペインの「演奏のパワー」と、現地スタジオの「音を作るクオリティーの高さが頭に強く残っていた」という。

 何も決めず、曲も半分ほどしかできておらず、依頼した候補のミュージシャンも見つからない、「綱渡り的な、一歩間違えると失敗していた」渡米だったが、出会いに恵まれた。ダグ・ローチにミュージシャンやスタジオを紹介され、「おかげでまとめることができた」と今も感謝する。

 鈴木自身が本場のミュージシャンに認められたことも大きかった。

 「僕の作る音楽がロックじゃなかったら断られてた可能性が高い。ダグ・ローチの家にギターを持って行って、こういう曲だけど一緒にやってもらえないですか?いいよってなって。そういうやり方を(ベーシストとドラマーにも)した」

 レコーディングには「最初の曲を録音した瞬間に、ああこれを作りたかったんだって思って、とにかく楽しくて楽しくて、迷いが全くなくて。一緒に演奏してとにかく驚かされる。それはもう気持ちよくてうれしくて、表現のしようがないような感動ですよね」という大きな喜びがあった。

 今回、50周年盤のリマスターは「74年の音のレンジ感から、どこの周波数をどれだけふくらませるかという具体的な作業を、今の自分の感覚で仕上げてみたい」という思いでスタート。

 「74年に作った音のバランスを崩さずに、全体的な印象を今の時代に合ったレンジ感にしたり、ダイナミクスというかふくらみというか、そういう仕上げをした」と説明し、「アナログレコードはゆったり聴けるというか、それなりの良さが出ていると思っていて。CDも音の迫力を意識して作ったので、いい感じで聴けると思う」と仕上がりに自信を漂わせた。

 鈴木にとって「バンド・ワゴン」とは何なのか、最後に聞いた。

 「気持ちは常に『バンド・ワゴン』のサウンドに後押しされている。自分の音楽のルーツっていうか、基本ですね」。

 ◇鈴木茂(すずき・しげる)1951年生まれ、東京都出身。ギタリスト、作曲家、編曲家、プロデューサー。68年、小原礼、林立夫らとスカイ結成。69年、細野晴臣、松本隆、大滝詠一とヴァレンタイン・ブルー結成。翌年はっぴいえんどに改名。72年末解散。73年、細野、林、松任谷正隆とキャラメル・ママ(ティン・パン・アレー)結成。75年、ソロアルバム「BAND WAGON」発売。鈴木茂&ハックルバック結成。92年、小原、尾崎亜美らと桃姫BAND結成。00年、細野、林とティン・パン結成。21年、小原、林、松任谷とSKYE結成。

 ◆鈴木茂「BAND WAGON」発売50周年記念ライブ~Autumn Session~ 11月13日=ビルボードライブ大阪、11月16日=ビルボードライブ東京で開催。

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