架空の映画製作費名目で知人女性から現金１千万円を詐取したとして、警視庁王子署は２２日、詐欺容疑で東京都港区の会社役員小倉輝美容疑者（７８）を逮捕した。署によると、容疑者は、かつて宝塚歌劇団では「大滝子」の芸名で、１９７０年代に月組トップスターとして活躍。現在は「光原エミカ」の芸名で活動を続けていた。

　小倉容疑者は「お金は返すつもりだった」と供述している。被害金は生活費や活動費に充てられたとみられる。

　逮捕容疑は２０１９年４月ごろ、東京都北区の７０代女性に「映画製作を企画しているが、費用が不足していて現金を貸してほしい」などとうそを言って１千万円をだまし取った疑い。

　他にも１千万円以上を女性から詐取した疑い。捜査関係者によると、映画製作に絡む米ハリウッドへの渡航費などとして、知人女性から複数回にわたり１００万円ずつを受け取っていた。女性は「元トップスターだから信用した」と話している。警視庁は製作の実態はなかったとみている。

　小倉容疑者は、１９６３宝塚音楽学校を首席で卒業。同期には榛名由梨らがいる。７３年に榛名と月組のＷトップに就任すると、翌７４年に宝塚で初演された「ベルサイユのばら」で主要キャストのフェルゼンを演じた。

　７６年の退団後は、芸名を「大多貴子」に変更。お金にまつわる事件が今回だけでなく、佐川急便グループから１億３０００万円の提供を受けたが、返還を求められ敗訴している。